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November 22, 2006

これは、巴状の模様を出すために彫った版木、 50工程近くある摺の、ほんの一例...

... そしてこれは、上にある版木を用いて模様を墨で摺る前と ...

... 後の状態です。

摺の作業は、冬中続きました。今までは、比較的小さな作品を制作していたので、これ程大きくなると新たな問題がたくさん出てきて、作業は遅々として進まない状況になってしまったのです。 この工程にかかる時間の見積もりを、間違えたに違いありません。

難題となった主な部分は、紙の「見当」を維持するということでした。和紙は湿度によって伸縮するので、小さな部分を摺った後には湿り気を加え、広い領域を摺った後にはそれを取り除くという手間に加え、日によって変わる湿度にも対応して紙の湿り気を保持しなければなりません。また、浮世絵ですから、色は線の内側にぴったり収まらなくてはいけないので、ちょっとしたミスも許されないのです。ですから紙を移動させる際には、張った状態を安定して保つように両手で支えながら、端が見当の位置にぴったり収まるよう、細心の注意を払わなくてはなりません。 こうした苦労はあるものの、摺る毎に生き生きとした絵が出来上がってゆくのは、なかなか嬉しいものです。

「じっくり着実に歩めば、やがて勝利に繋がる...」とでも言ったら良いでしょうか。