版画玉手箱 #6


ボタン模様

今回は、ちょっと趣きの違う作品です。昭和11年に出版された「新図考」という題の版画本からの復刻で、作者は袴田雪華となっています。

この本は、とても運良く手に入れることができました。友人の○○さんは、若い摺師ですが、版画製品を購入しては販売するという副業を持っています。彼は、ある業者からこの本を買い取ってインターネット・オークションで販売する予定でした。でも、ネット上に掲載されている画像を見た私が、「こんな方法でこの本を売っちゃだめだよ〜!僕の制作に使いたいんだから!」と、まるで駄々をこねる子供のように無理を言ってしまったのです。

それから数日が過ぎると、件の本が私の郵便受けに到着して、じっくり中を味わうことができました。図柄本というのは、着物の柄や焼き物の模様といった、特定の分野の職人に見本を提供する事を目的として作られているのがほとんどですが、この本はちょっと違っていて、一般の読者層を対象としているようです。読者層と書きましたが、どのページにも文章はなく、美しく画かれた模様だけが掲載されています。どの模様も、完璧と思えるほどの組み合わせで配置され、しかも、まるで戯れているかのように次から次へと続くのです。

実を言うと、今回のためには別の作品を考えていました。でも、この本を手にしてしまうと、制作に取り掛かる間際なのに変更したい、という強い欲望に抗いきれなかったのです。(すべて、今から数週間前の出来事です。)

今思い出しましたが、○○さんにはまだ支払いを済ませていません。美しい模様を使うことしか念頭になく、すっかり制作にかまけていました!早くお礼をしなくてはいけませんね。そして、今度こんなに素晴らしい版画を見つけたら、他の人に売るなんて考えないよう、しっかり頼んでおかなくては。

私は、魅力的なデザインを目にすると、むやみやたらと欲しくなります。収集家の方達も、きっと影響を受けますよ!    

David

平成17年4月11日