版画玉手箱 #5


弁財天

埋もれた宝を発掘して多くの人達に紹介する、この喜びは私の仕事の特典でもあります。この版画は良い例ですが、見た事がありますか、それとも聞いた事がありますか。賭けてもいいですよ、どちらでもないはずですから。江戸時代に作られた版画は膨大な量で、しかも実に変化に富んでいますから、定番とも言える浮世絵ばかりを繰り返し復刻するのは、あまり利口なやり方ではありません。

これは弁財天で、七福神の中の3人を画いた、一連の作品の中にあります。弁財天が何の神様かについて調べてみた所、諸説あるようなので、その中から私に都合の良い「芸術と音楽」を選んでおくことにしましょうか。

この作品は、1760年代から70年代に作られたもので、絵師は富川房信です。このような1枚ものの作品ではそれほど知られていない人ですが、黒本や青本(草双子)には、300近くの物語に絵と文の両方を書いています。

元にした版画は、多色摺りが一般に出回る以前の作品なので、私が自由に色を考えました。でも、線の方は忠実に復刻しています。彼女が手にしている琵琶や着物の線は、文字で描かれていて、「琵琶法師弁財天」(びわほうしべんざいてん)と読むことができます。

以前から、この作品は「版画玉手箱」に相応しいと考えていましたが、どの時点で加えるかは、弁財天の頭上にある枝が決め手となりました。今年は、玄関に玉手箱を置いている方も多いことでしょうから、できるだけ季節に合うようにしていますが、花の絵ばかりにならないよう心掛けています。さくらの花が散ってしまったら、次にくる作品は... おっといけない... 届いてからのお楽しみ!

ここまでの旅、皆さん満足してくださっているかな ...    

David

平成17年3月28日