版画玉手箱 #4


お茶の花

ここ数年、恒例の展示会では、「デービッドの選抜き」というコーナーを作っています。自分のコレクションの中から選んだ作品を紹介しているのですが、重要な展示要素となってきています。昨年は、この中に川端玉章という明治時代の画家の本を展示しました。水彩画を勉強する時の手本です。今回の版画は、明治33年に出版された、同じく玉章の画いた別の手本から選びました。

それには、「女子高等画帖」という題がついていて、作品は綴じずに収納されています。残念なことに、私の所有するものは、何枚かが欠落しています。誰かが借りたままになっているのでしょうか。でも、風景・人物・静物などを題材とした絵が、まだたくさんあってとても素晴らしいのです。もしも今年、残りの作品すべてをこの集からだけ選んだとしても、皆さんから不満の声は出ないと思いますよ!

この絵を選んだのは、もともと自分が気に入っていたということもありますが、他に理由があるのです。今年の版画玉手箱に採用する絵を探して、この本を見ていた時、この絵がぴょんぴょん飛び跳ねて、「私を選んで!ねえ、ねえ!」と叫んだのですから。一体どこがそんなに気に入ってしまったのか、私自身わかりせん。筆の勢いを感じる棗の輪郭でしょうか、葉にあるぼかし、あるいはさっと流れる大胆な朱の色使いかもしれません。

先日、収集家のひとりと電子メールのやり取りをしていた時、話が今年の予定のことになりました。きっちり2週間毎に作品を完成させると決めたことに言及して、「全部を傑作にしようなんて欲張っちゃ、だめよ!」と言うのです。こう言ってくれるのはありがたいのですが、玉章がこの手本に取組んでいた時は、きっとそう努力したのではないでしょうか。彼が望みを達成したかどうかはさておき、私は、今年の玉手箱に24本を下るホームランでは満足できませんから。

結果は、12月になってのお楽しみ!  

David

平成17年3月14日