人形市
「摺物アルバム」を集められた方はご存知でしょうが、私は数枚の千社札を組み合わせて、一枚の、作品にしたことがあります。今回も、同じ資料の中から掘り出し物を見つけました。
この絵は、「江戸名物」と題された15枚がひと組になっている二丁札(幅が2倍の札)の中にあり、人形町の市の様子を描写しています。絵は江戸時代の様子ですが、昭和3年の作品ですから、この情景を事実そのものと受け取ってはいけないでしょう。
人形町は、昔も今も、その名の通り人形商の多いところ、ひな祭りが近づく頃には、きっと賑いを見せたことでしょう。作者は分かりませんが、この小さな絵にとても多くの要素を画き入れています。立ち並ぶ露天商のひとつに足を止め、飾られている人形や装飾物を物色する人の様子が中心になっていますが、私はむしろ、その周辺にいる人達の方に興味を持ちました。左下に、お盆を持った少年が見えます。貝と吸い物椀を添えた寿司の出前でしょうか。客が立て込んでくると、出店の主人達は昼食を摂りに出ることもできなくなったことでしょう。駕篭が通り過ぎて行きます。お供の人達のきちんとした身繕いから、きっと偉いお方が乗っているのでしょう...
そして、私が一番興味をそそられるのは、右上の方にいる人です。外国人のように見えないでしょうか。突き出た鼻、あごにあるヤギ髭、茶色い髪の毛... あえて想像するなら、江戸時代の末期、日本が開国をした頃にやってきたフランス人が、ふらりと通りに出かけたのではないでしょうか。
絵自体はとても単純ですが、摺の回数はかなり多くなっています。期限に間に合って良かった!では、2週間後にまた!
David
歌: 内裏雛 人形天皇の 御宇かとよ 芭蕉 (はせを)