版画玉手箱 #2


今年の作品集となる版画は、ほとんど縮小して制作することになります。でも今回は、何と拡大しています!この絵は、高橋松亭が1930年代に東京の版元に頼まれて画いた、たくさんの小さな版画の中にあります。少し古い時代の風物を題材にしている絵がほとんどなので、日本に来る外国からの旅行者向けに作られたのではないかと思います。でも、ここに選んだ作品は、もっと一般的なので、観光客でなくても、この静寂な美しさを堪能することができるでしょう。

この文章を書いている今、作品の方はまだ制作中です。今年は、1週おきに作品を完成させるという予定を立てたので、毎日たくさんの仕事をこなしていかなくてはなりません。たとえば、作品発送の日まであと1週間という現在、彫の工程はほぼ終了して摺に入るところですが、3作目の作品の一部も同時に彫り進めています。そして、第4作の版下作りは、いつでも始められる状態で机の上に準備してあります。第5作目の作品についても、最終決定には至っていませんが、候補はいくつか選んであります。予定表を見ると3月28日になっているので、桜の花のある...

このような状態で、今年は仕事を進めてゆくことになるでしょう─まるで蛙がぴょんぴょん飛び跳ねるように、ひとつの版画から別の版画へと行ったり来たり。彫台から摺台へ、それから、書き物や帳簿付けをするパソコンからプリンターへと移動の繰り返し。郵便局や銀行にも行かなくてはならないし、材料を調達してくださる人達や手伝いをしてくださる市川さん、そして翻訳を頼んでいる石崎さんなどとの連絡も取らなくてはならない。

時として、昔の職人が羨ましくなります。職業はひとつだけ、そのひとつにひたすら専心。でも、ほんとうは... 限り無くたくさんの事をこなさなくてはならないからこそ、手応えがあり面白みが尽きないのだと思っているのです。さあ、おしゃべりはこのくらいにして、急いで作業台に戻らないと。週末に送る版画がないことになってしまいます!

David

平成17年2月14日