あとがき 恒例の展示会でお客様とおしゃべりをしている時、こんな問いかけがありました。 「外国でも展示会をなさるんですか?」 私は、そのような事はほとんど考えたこともなく、毎年一回の展示会を東京で開催するだけでもやっとなのが実情なのだと説明をしました。すると、 「外国の方達はきっと、デービッドさんの作品に興味を示すと思うんですけど...」と続けられたのです。彼女の言う通りでしたから、ついにっこりしてしまい、 おっしゃる通りで、それも興味を示して見るだけじゃなく、実際に作品を集める外国の人達が結構いるのだと話しました。 この1年間に、この第3集あるいはこれ以前のアルバムを収集することで私を支えてくださった方々の名簿が左にありますが、それを御覧になると分るように、外国からの名前がかなりあります。歴史的に見ても、外国の人が日本の浮世絵に興味を示すということは良く知られていることで、外国から日本にくることがまだめずらしかった時代に、これをお土産として自国に持ち帰る品々のひとつに加えた人がたくさんいました。そして実際、過去にこういうことがなかったとしたら、皆さんがこのアルバムを手にされるようなことにはならなかったのです。この外人が摺物アルバムを作るなんてことは起こらなかったでしょうから! 勝川春章の百人一首を復刻していた時、この作品は何人かの西洋人が集めていました。彼等にとっては、意味の分らない歌が解読不可能な毛筆で書されていたので、敬遠されがちな作品であったにもかかわらずです。でも、現在の作品は、理解するのに障害となる要素がほとんどないので、文化の違う人達にとってはとても魅力的に映ります。左のページにある名前を数えてみると、26%というほぼ4分の1が海外の収集家で占められていることが分りますから。 ところで、私が外国で展示会をしたことがないとしたら、一体どうやってこの人達は私の作品を知ったのでしょうか。日本に来た時に摺物アルバムのことを耳にした人もいますが、ほとんどは実際に日本に来たことの一度もない人達です。こういった人達はインターネットを通じて私の作品を見つけているのです。私は、たくさんの情報を載せたホームページを作っていますから。ですから、考え方によっては、外国で展示会をしているとも言えるわけで、それも、休館日なしの24時間営業です! 摺物アルバムが誕生するまでには、かなり長い熟考期間がありました。以前のシリーズが終わる前の数年間、アルバムにする版画についてじっくり構想を練りましたから。こうして数年続けていると(いつのまにか過ぎて信じ難いほどですが)、目に付くあらゆる所からアルバムの「候補」となりえる作品が見つかります。浮世絵図鑑をじっくり眺める度にいくつか、そして版画店のカタログを見る度にいくつか、アイデアはもう篭から溢れ出しています!でも、そんなに豊かなアイデアが身近なところから得られるというのは、あれももれも欲しいものだらけになって逆に危険でもあるのです。子供の頃よく母に言われた通ようにです、「目が食べたい程お腹に入らないわよ!」と。私にとっての難題は、ひとつのアルバムにする絵をバランス良く選ぶということです。いくらそうしたくても、10枚が10枚とも30回摺りの版画にするなどということはおよそ不可能なことですから!それに、すっきりしている絵が結構好まれるということも、お客様と話をしているうちに分ってきたのです。こういった版画でいい物は、なかなか見つからないのですが! 次の1年もこの水準を維持できるよう、私が優れた版画を作るのはもちろんですが、摺物アルバムに相応しい作品を厳選していくことも、取り組み甲斐のある仕事です。このアルバムを集めてくださり、ほんとうにありがとうございました。大切にしていただき、私の製作に関わる喜びと同じくらい、皆様にもお楽しみいただけることを願っております。 平成12年1月 デービッド |
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