あとがき この摺物アルバムを計画し始めたときには、もう3年前のことになりましたが、最終的にどのような形に収まるのか、自分にも想像できないほどでした。価格をできる限り抑えたかったので、部数が少なくても効率が良く作業ができ、しかも、仕上がりが本職並みになる方法をあみ出そうと、随分と智恵を絞りました。使えそうな形をスケッチしては見本を作り、レイアウトの仕方から装丁にいたるまで、いろいろと改良を重ねました。 ひとたびシリーズが始ると、様々なことに決定えお下し、必要なことをきちんとまとめました。そうして、今御覧になっている形に落ち着いたわけです。気付かれたかどうか、このアルバムは完全に手作りなんです。(ホームメードの方がいいかな!) 版画は、もちろん伝統的な方法で作ります。仕上がる頃には、その版画に添える随筆を書きます。それを貞子さんが日本語に訳し、英文と日本文を突き合わせて1行ずつ読み合わせをし、日英両方とも、できるだけ読みやすいようにします。これが終わると、自宅のレーザープリンターで印刷をして、版画と一緒にアルバムの中に入れられるようにします。それと同時に、誰にどの版画を送るかという月ごとの表(前の年の版画を希望している人もいるからです)や小包に貼る宛名などの、附随した書類も用意します。ここまでの仕事が済んだ時点で、市川さんに連絡すると、彼女がやって来て必要なものすべてを持っていきます。 市川さんは、私が考案した道具を使って台紙をのり付けし、その中に版画を差し込みます。それから、郵送できるように包装して郵便局に連絡します。アルバムの表紙は私達で作らず、東京にある、手作り仕上げの専門店に特別注文をしています。 ハイテクの機械の助けを借りてはいますが、(このマッキントッシュがなかったら、とてもこの「自己出版」のようなことはできません! )可能な限り手作りといえるでしょう。 ところで、内容はどうでしょう。計画した通りにいっているでしょうか。今まで作ったアルバムは、2セットとも変化に富んだ作品集で、風景、花鳥、人物、静物、昔話、などなど.... 自分でもよくやったと思えるのは、聞き慣れたお決まりの人達の作品ばかりでない、ということです。北斎や広重の作品もありますが、アルバムの中の少なくとも半分は、聞いたことのない人の作品(と思っているんですが!)だと思います。私は、知られていない浮世絵をできるだけ皆さんに紹介するということを、自分の使命と思っていますから。 浮世絵といえば、もうひとつ大事なことですが、このアルバムには厳密に浮世絵と言えない作品も入っています。9枚目にある吉田氏の作品が、その例です。購入の予約をした時、このような作品が届くとはおそらく予想していなかったと思いますが、包みを開けてがっかりしたなどということは、ないと... この第2アルバムでは、版画が作られた時代の幅を広げ、1686年から1939年までという250年もの範囲にしました。これからのアルバムでは、これ以上時代差を広げられませんが、だからといって良さが半減するようなことはないと思います。世界中の美術館には、これから取り上げていきたい、興味をそそられる素晴らしい版画が山のようにあるのですから! ところで、よくあるのが「来年は何をするのか...?」という質問です。それには、こうお答えしましょう。「もちろん、続けていきますよ!」 最初の2セットを作るのは、とにかく楽しかった。でも今は、もう第3セットの原案作りに没頭しています。これも、「百人一首シリーズ」の時のように十年計画になるのでしょうか。これには、どんな答え方もできるわけで、なぜなら、このシリーズでは先のことは何も決めていず、年ごとに計画を立てて進むだけだからです。 興味が続く限り、挑戦する内容が残されている限り、そして大事なこととして、収集家にそっぽを向かれない限り続けていくでしょう。 このアルバムへの御協力、深く感謝しております。皆様の、作品を大切にする思いと鑑賞する楽しみが、私の製作への喜びに負けないくらいあることを願ってやみません。 平成13年1月 デービッド |
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