「自然の中に心を遊ばせて」 : 第十章 : 春の川
「それはまさしく球体!平らな背景に銀色の円盤が張り付いている面ではなく、ベルベットのように深い闇の大洞窟に漂う銀の球体なのだ。これでやっと「天体」の意味が分かった! 手に取って遊ぶどのボールとも同じように、月も完全な球形をしていて、しかも表面には模様もあるのだ。硬貨とボールの違いを考えて欲しい。心の中にこの違いをはっきりイメージできるだろうか。一方の平面性に比べ、もう一方は球なのだ。空中にぽっかり浮かんでいるのは球体なのだ。もちろん頭では知っていた。人間がそこまで飛んで行って、その表面で歩きすらしたのだから。それでも、僕には今やっとその形が実感されるのだ。それが、僕たちの住む星と連動して動く、もう一つの天空に浮かぶ世界だということが、やっと納得できた。」