デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

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この人誰?

このニュースレターを読んでいる方の多くは、このコーナーの題に疑問を感じていることだろう。「貞子って誰?スタッフの中に入ってないね。そう言えば、そんな名前のオバケいたよね」なんてね。それじゃあ言って聞かせやしょう!

私は、デービッドに魅力を感じ、彼のすることを手伝い、一緒にいることに喜びを見いだしたことのある女。何年も前のこと、陽の射し込むアバートの一室でモダン音楽を聞きながら無心に彫りの作業をしている彼は、数歩内に近づくまで私が部屋に入ったことに気付かなかった。この静かな男がひとたび作業台を離れると、猛烈な速さでタイプをたたき事務処理をする。どんな作業をしても段取りが正確で手早い。「静謐さ」と「頭の回転の速さ行動の迅速さ」を兼ね備えた彼、そしてその生き方に心引かれた。

それから時が流れ、私たちは大海原に浮かぶブイのように漂い続けた。現代社会で事業を営む人たちはほぼ例外なく、ネット社会の台頭によって大きな跳躍を迫られている時代だから、デービッドも例外にはなり得ない。彼はうねり来る波に器用に乗ってグングン前進している。と同時に、自分の工房に若者を集めて後継者を育てるという、彼の長年の夢も実現しようとしている。

私自身は特に木版画に興味がある訳ではないし、自分のプライベート空間が畳数枚に押し迫っても生きる喜びを見いだせる人間でもない。要は俗人なのだ。とすれば、おのずと2つのブイの流れる方向は離れていくことになる。今回この号を翻訳していて、このことを痛切に意識した。長年の読者の中には、訳の分からないカタカナ単語に辟易した方も多いことだろう。デービッドの営業スタイルも転換期にあるのかも知れない。

でも、最後に強調したいのは、私の中で、彼への尊敬の念はまるで変わっていないということ。毎晩パソコンの画面で互いを見つめながらの会話は、欠かせない習慣になっているし、できることならこの関係を続けていきたいと思っている。時には、会って食事をすることだってあるんですよ!

さあ、お分かりですね。貞子ってそんな存在の人。必要とされる限り、陰に存在するつもりです!

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