デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

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木工作業

私が24年前に「百人一首シリーズ」を始めた時から、決して譲れない方針がいくつかあります。その一つは、収集家の方たちに「版画だけ」を送る事はしない、と言う事です。作品が「主な魅力」だということはもちろん重々承知していますが、どのように渡されるか、保護されているか、ということも重要だと考えるのです。私自身、乱暴に扱われたために、保存年数からは考えられないほど痛んでしまっている作品をたくさん持っています。過去の(現在もなお)版元のほとんどが、貧相な材料で版画を包装しているのは、まるで長持ちしないことを保障しているかのようです。

ですから私は、最初から自分の制作した版画ができるだけ長持ちすると確信できるように努力してきました。そのためにかなりの費用を要してもです。専用の保存ケースですから、時折新鮮な空気を入れてさえもらえれば、かなり長期間の保存に耐えるのです。

「版画玉手箱」の入れ物は、このような方針に基づいて保存ができるのみならず、展示できるという利点も加わっています。7年ほど前に制作した最初の「版画玉手箱」のケースは、私がデザインをして中国で作ってもらいましたが、「美の謎」シリーズの時には(やはり私がデザインをしました)、小田原のある「からくり」工房に製造をお願いしました。そして今シリーズ用には、より高い品質を望んでいるため、自分の工房で制作しています。

1日は、どう足掻いても24時間だけですから、全行程を自分でしようなどとは考えていません。この仕事のために、助手として李泰浩君に来てもらっています。彼は、版画の摺に興味のある若者ですが、桐材から美しい版画保存箱を造り出す作業に、快く協力してくれることになったのです。

今回のシリーズに関しても、箱のデザインは私が手がけました。李さんと私は、製造工程の準備として数週間を費やし、このニュースレターを書いている現在は、その作業がほぼ終了しています。必要なジグや用具はほとんど自分たちで作り、みなさんがこの記事を読む頃には実際の製造が始まっているはずです。

外部の製造業者に委託すれば遥かに手間がはぶけ、しかも、中国ならばずっと安上がりだったはずですが、版画制作にかける私の時間と努力、そして、どれほど長い期間この版画が存続するか(優に200年)を考えると、収納用の箱にかける労力は十分に報われると思います。

同感でしょ?

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