デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

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「美の謎」シリーズ

予定よりも数か月遅れてしまいましたが、「版画玉手箱」美の謎シリーズは終わりを目前にしています。この記事を書いている今は、最終作品の摺をしているところですから、間もなく忍耐強く待っていてくださる皆様の元にお届けすることができるでしょう。

様々な時代に飛んで、多様な手法の作品を鑑賞しながら続けてきましたが、最後は開始した時と同じく北斎の富士に戻ります。今回のシリーズにおける名目上の「使命」は、日本の伝統木版画の美しさをご紹介するということで、振り返ってみると、その成果は上がっていると思います。たくさんの版画をお持ちの経験豊富な収集家の方々には、すでにご存知の内容が多かったかも知れませんが、それでも何か新たな発見があり楽しんでいただけたのでは、と思っています。

また、木版画を集め始めたばかりの方々にとっては、優れた木版画の入門体験になったと思います。

私自身の立場からすると、このシリーズは、多くの点で成功していると思います。職人としての実力が十分発揮されて満足していますし、60才代に入ってもまだ「出来る」と自信も持てました。正直、驚異的に優れた技術を見せる作品も含まれています。

また月並みですが、事業面からもとても順調です。シリーズ終盤には、予約者数170人という過去最高記録に達しました。私は長年、1作品につき200枚摺り、制作段階で収集家の元に送った残りは、「バックナンバー」として、その後の予約者に販売するようにしてきました。このシリーズの場合、残りが手元を離れて行くのは間もないことでしょう。

ここで困るのは、来月になると私の収入が、安定した状態から(再び!)急にゼロに落ち込むことです。これを回避する唯一の策は、直ちに彫台に戻るしかありません。この先は、どうか後のページで読んでください!

この企画に参加して、私を支え続けてくださった皆様に、心から御礼申し上げます。収集された方々は、真の「玉手箱」所有者になられたと、確信しております。

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