デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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展示会報告

2年間も展示会を開かなかったので、開催への意欲は満々でした。私の体は来る日も来る日も作業台に鎖で繋がれているようなものですから、1人でいることがまるで苦にならない私でも、時には「外の空気」を吸う必要があります。さもないと世捨て人みたいになってしまいますから!

ですから展示会の予定が決まると、開催が楽しみになりました。準備は例年よりちょっと大変でした。こじんまりした銀座のギャラリーは間口もかなり狭いので、通常展示する部分をかなり削除する必要があったのです。過去の作品の展示やギャラリートーク、それに(僕としては大事に思っている)コーヒーコーナーも諦めました。

今回展示したのは必要最小限の内容で、完成したばかりの「自然の中に…」シリーズと木版館商品、そしてなんとしても外せない新企画、「美の謎」の第1作目の作品です。

この準備段階で、私がとても興味深く思っていたのは、銀座で開催すると、どんな影響があるだろうか、ということでした。今まで新宿(その後は有楽町)を選んでいたのは、ここが誰でも気軽に行ける町だと思っていたため、自分の作品を発表するのに相応しいと思っていたからです。銀座はちょっと気取った町という印象があり、私には不似合いに思えていたのです。

でも、日本の読者ならすでにご存知のように、時代は変わり、高級ブティッが軒を連ねてはいますが、隣り合わせに安売り洋服店があったりして、僕の木版画も含めて「何でもあり」の感が強くなっています。

目抜き通りに面した場所などとうてい私に手の届くはずがなく、裏通りの小さなギャラリーで満足することになりました。結果、通行人が時折パラパラと立ち寄る程度でしたが、主な開催目的は収集家の方々にお会いすることでしたから、これで良かったと思っています。実際、1週間を通じて毎日、絶えることなく収集家の方が訪れて下さいました。

この展示会が終わり一段落して通常の制作に戻ると、ちょっとした情報が入ったのです。私が今まで参加したイベントとはまるで違うタイプの、アート関連のショーです。

これは東京ビッグサイトで毎年2回開催される、デザインフェスタという大規模の催しです。「デザイン」に関連している内容であれば、アマチュアであれプロであれ、誰でも参加できる催しです。毎回2千人以上の参加者があり、来場者は数万人に上ると言われています。参加費は高くないので、騒がしく混沌としたイベントではありますが、「やってみよう」と思い申し込みをしました。

実際、会場は常に騒がしく混乱した状態でした。私に当てられたブースは、ステージに向かう主要通路に面した人通りの多い場所で、日曜日などは、どんどん入場してくるたくさんの人で、立ち止まって見ることもできないほどでした。それでも私は、ほぼ1日中実演を継続していたので、「人の目を引き」たくさんの人たちが立ち止まって話しかけてきました。

私のことをテレビや雑誌で見たことがあると言う人もしばしばあって、本物に出会った記念にと、10回以上も一緒に写真撮影をしました。

私のブースは1畳分という狭さでしたから、そこに座っていた私は、1日の終わりにはかろうじて立ち上がれるというほど足がこわばってしまいました。そして、日曜日の夜に開催を終えて帰る電車の中では、ウトウトしかけてしまったほどです。こんなことは、初めてです!

こうして疲労困憊はしたものの、結構楽しかったので参加して良かったと思っています。でも、これから暫くの間は、自分の静かな工房で作業台にしっかり向う暮らしに戻ります!

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