デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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体と心

7月の初め、いつもの美容室に行くときに、不注意から転んで左肘下を骨折した。霧雨が降っていたので滑り易いと用心し、車を降りると慎重に歩いて無事入り口に着いたのに、ドアーを開ける最後の一歩がいけなかった。玄関マットの直ぐ手前のタイル上に軽く着地した左足が前方に勢い良く滑り、一瞬体が宙に浮いて仰向けに着地した。その時左肘のあたりでなんとも澄んだ音がしたのでいやな予感はしたのだが、起こされて立ち上がってみるとどこも悪くない。一様医者に見せた方がいいというとで、最寄りの整骨院に歩いて行くと、途中でガラスに映った肘の皮膚が折れた骨に押されて出っ張っているのを見て青くなった。美容室に戻ってご主人のお世話になり、手術のできる病院に駆け込んだ。もちろんそのまま入院、全身麻酔での手術となった。

問題はその後である。何しろ体を良く動かす生活をしている私が、毎日ベッドに横たわりロクに歩かない状態が続くと、次第に食欲がなくなり気も滅入ってくる。もちろん熟睡もできない。ベッドの上での軽いストレッチや病院内にある階段の上がり下りは意識的にしていたのだが、心が萎えるというのだろうか、体中の力が日に日に抜けて、訳も分からず悲しい気分になってきた。

やっと退院の許可をもらって、友人に送られて自宅に戻ると、2週間ほったらかしになっていた庭は見事なまでに草丈が伸びている。荒れ野の中に、トマトやオクラの苗が垣間見えている状態。だが生活し慣れた生活環境に戻ると、心も体も直ぐに通常のリズムへと回転し始めた。窓を開け放って部屋に外気を入れ、汚れ物を洗濯機に放り込み、左手を三角巾で吊ったまま庭に出動し、汗だくになって動き始める。幸い私は右利きである。左肘が不自由なだけなので、丈の伸びた草を引き抜く作業は問題なく続けることができた。何と単純なことだろう、その晩から食欲は快復して何日振りかで深く眠ることもできてしまった。

現在はまだ骨を繋げるワイヤーが入っているし、毎日リハビリに通っているものの、まだ完全には左腕の曲げ伸ばしができない。思うように運動もできないため、雨の日が続いたりすると気持が塞ぎがちだが、腕に負担の掛からないクラスを見つけては近くのスポーツクラブに通っている。一般の方たちはどうなのか分からないが、私にとっては体を動かす事が健全な精神を維持するために必須の条件なのだ。

最後に一言加えると、この失敗に懲りて、さすがに家の中で走り回ることはなくなった。失敗をしたら、そこから学ばなくては!

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