デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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失敗も人生?

ここ数日、私は庭の草や木を抜くのに汗を流している。その植物は、全て自分で植えたもの。探し回ってやっと見つけて手に入れ、植えた当初は早く大きくなれと毎日毎日面倒を見て大事に大事に育てたものばかりである。むなしい作業を黙々と続けながら、持って行きどころのない、いまいましさを自分にぶつけている。「まったく馬鹿だよ」「植えたり抜いたり忙しいねえ」「ほら、他の大事にしている草も抜いちゃったよ!」

ことの次第はこうである。木の方は西洋の何とかガーデンとやらで、レンガの壁を覆う蔓アジサイの美しさに心を奪われた。似た物を探し探してやっと小さな苗を手に入れ、おんぼろ物置の西側の壁を覆う姿を夢に見続けた。たかが2メートル四方の壁なのだが、苗はなかなか生長しない。ところが5年ほど過ぎた頃、突如猛烈な勢いで生長を始めた。みるみる蔓が伸びて物置の中にまで侵入するのみならず、裏庭の至る所に伸びてゆく。伸びたところが土に付けばそこから根を生やしてもっと勢いづくし、蔓はすぐに木化して太くなり、勢いは隣家にまで達し始めた。私は、ディズニー映画の眠り姫に出てくるバラを想像してたじろいだ。おまけに6年後に咲いた花はなんともショボイ! それでも翌年はなだめすかして育て続けたが、とうとう恐れをなして根こそぎ絶やすことにした。木化した蔓を剥がし、ノコギリも使って「格闘」の末、やっと作業が終了。

草の方は、ガーデニングでよく言われるグランドカバープランツというヤツである。日本の庭は黒土の美しさを楽しむところがある。木の根元はスッキリ掃き清めてさっぱりさせておくことが多い。ところがある日、誰かさんがこう言った。「ダーティーな土がたくさん出てるね」の一言。要は美観の違いなのだが、確かにヨーロッパの庭は土を見せない。以来、日陰でも育つ植物を探し求め、空いた場所にせっせと植えた。毎日毎日大事に育てて「早く大きくなれ」とささやいた。気がついたら、どんな暗いところも草がびっしり覆うようになった。そこで安心していたら、どうもおかしい。他に植えたはず草花がいくつも消えている。そう、浸食されてしまったのだ。という訳で、「誰だ!こんなにどこにでも植えまくったのは!」と、鎌を片手にまたもや戦闘開始。

このまま作業が進むと、我が庭の冬は一層閑散としそうだが、頭の中はすでに春。あそこにあれを植えて、あれをここに移して......。懲りないところが、能天気? いや、近頃私はこう思う。これが人生じゃないか、これでいいのさって。

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