デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

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再編成の時

毎年春号は「レポート」のような記事が多くなります。メディア関連、1月の展示会報告、そして前年度の決算報告です。

最初のひとつは、もうお読みになりましたが、次のふたつは一緒にすることにしました。両方ともお伝えする内容がないからではなく、短くまとまってしまうからです。つまり、展示会も売れ行きも惨憺たるものだったからです。

恒例展示会は第19回目で、新たに私の作品を集め始める方がひとりもいなかったのは、初めてのことでした。幸い、会場にいらしてくださった過去の収集家のうち6人ほどが新企画に予約をしてくださり、同じく以前収集をしてくださった方が過去の集を予約してくださったりしましたので、まったくの空手で会期を終えたわけではありません。それにしても、やはり気落ちしたのは事実です。

問題は、今年も宣伝不足だったためです。ここ5〜6年は、展示会時期にメディアに取り上げてもらうことがほとんどありません。年間を通してみれば、雑誌に載ったりテレビに出たりもしているのですが、展示会に来るお客さんの数には、まるで繋がらないのです。収集家が増えるためには、展示会に多くの人が来場しなくてはならず、そのためには人々の気持ちを捉える僕の記事が必要なのです。かといって、自己資金で展示会の宣伝記事を依頼するのは経済的に不可能。私にできるのは、マスコミ業界に宣伝のパンフレットを送付して、彼らが取り上げてくれることを期待するだけです。そして、先ほども書きましたように、今年も記事はなしに等しいような状態でしたから、1週間の会期中には、閑古鳥の鳴く日が多かったのです。

でも、初日の日曜日だけは例外でした。長年収集を続けてくださっている方達がたくさんいらしてくださり、とても楽しく過ごしました。私の活動を支えてくださる人達に囲まれ、難しい質問について話をしながら、毎日がこんな風ならなあと思わずにはいられませんでした。

交通会館のこの部屋の使用料は、1時間当たり9,000円になります。ですから、友人や収集家の方がいらして賑やかになることがあっても、残りのほとんどの時間があまりに閑散としていると、ちょっとした挫折感を味わってしまいます。

会期を終えて自宅で後始末を済ませると、所得税の申告をするために前年度の帳簿を付けます。 思わしくない数字になると予想はしていましたが、これほど悪いとは思っていませんでした。このグラフをご覧になるとひと目で分かります。

長い年月をかけた百人一首シリーズを終えた直後から続いていた好調な時期を過ぎると、販売量は急転直下。前年度の成績は1993年とほぼ同じ状態です。14年前にこのニュースレターでは、「つらくて長い1年でした」と書いています。

販売収入は、ここ数年よりもひどく落ち込んでいて、必要経費や税金やローンで完全に消えています。一番下の欄を見ると、1年間ほとんど無収入といった状態で、支払い延長を連続することで、なんとか食品などを購入している状態です。

材料供給者やパートの方は事情を承知してくださっているので、あまり強い負い目を感じる事はないのですが。現在机の上には、未払いの請求書が何枚かありますが、たいした額ではないですし、住宅ローン以外に借金は一銭もありません。

とはいえ、この時点で見直さなければならない課題が2つあります。その1、この脱落の原因は? その2、巻き返しをはかるためにどうすべきか。

 

ひとつ目の課題は簡単です。グラフ上で安定した収入があった期間には、人々に好まれそうな版画を作り、一定の間隔をおいて作品が発送できるように制作することも可能でした。

でも、掛軸を企画した2年前から始まった「ガタ落ち」は、このどちらも満たさなかったために起きたのです。掛軸の制作案を出した時点で、「多くの方に気に入っていただく」には不安があり、それは的中。予定通りには完成しない企画と予想をし、正にその通りになりました。

今振り返ってみると、こうした難しい年の直後に、更に込み入った企画(「自然の中に心を遊ばせて」)をするのは、あまり賢いやり方ではなかったようです。「版画玉手箱、その2」あたりが妥当な企画だったでしょう!とは言っても、過ぎた事はそれまで、後戻りすることはできません。私は、溺れそうな状態にあるのです!

今回の企画を集めてくださっているのは、現在76名です。それぞれの章を200部制作しているので、約3分の1の予約を受けている現況になります。最初の4作を制作するのにかかった時間を基準に計算すると、今年中に作れるのはあと5作強になります。

加えて、過去の集からの収入もわずかながらあり、現在も「百人一首版画シリーズ」をお集めの方もまだ何人かおられます。また昨年は、「木版館」から出版している版画に随分と助けられ、将来こちらからの販売量が重要な割合を占めることを期待しています。

こういったこと全部を考慮しても、今年の収入はあまり期待できないようなので、何とか手を打たなければならない状況です。

 

それにしても、最も変えてゆきたいのは、先ほど言及しました76という数で、なんとか200という数にもってゆきたいところです。そうすれば、問題はすべて解決ですから! 残念ですが、言うは易く行うは難し。現在私にできるのは、多くの方に好んでいただける作品を作ること、ここさえクリアーすれば、版画も本も新しい所有者のもとに飛び立ってゆけるのですが......長期戦ですね。

もうひとつ考えられる手段は、木版館の商品を増やすことです。ここで販売する版画をすべて購入し、次の作品を注文するのを楽しみにしてくださっている方が、かなりいらっしゃいます。でも、自分でする時間がありませんし、他の職人に頼む余裕もありませんから、現在はこちらの出版を増やすことはできません。

では、どうすればよいのでしょうか? 非常に時間のかかる版画制作に日々追われているし、投資をする経済的余裕がまるでない。こんな状況下に置かれた私に、一体なにができるでしょう?

でも......、望みはまだあります! ほんの少しですが、改善できることが考えられるのです。

まず最初に、ホームページの日本語版です。昨年度の収益のほぼ半分はインターネットからの販売で、そのほぼすべてが英語版から、つまり海外からの注文でした。数年前までは、日本国内でインターネットを通じて物を買うのはあまり盛んではなかったのですが、最近は変わってきて、多くの方々がパソコンを使っての購入に違和感を感じなくなっています。私はその変化に追いついていなく、ビジネスチャンスを逃しているのです。

そのため、ここ数週間は夜の時間をホームページ作りのプログラミングに費やしています。今までの自分の作品と木版館で販売する作品を、分かりやすくかつ魅力的なページで紹介し、買い物カゴ方式も組み入れたものです。

新ホームページは http://mokuhan.com にあります。

このサイトを作るにあたり、アフィリエイトの募集もすることにしました。(これは英語のサイトでも実行しています)ご自分のブログやホームページをお持ちの方ならどなたでも、私の用意した小さな広告バナーを載せてリンクすることができます。このイメージにはアフィリエイトコードが隠れているので、誰かがこの宣伝をクリックして私のホームページに来た場合、元サイトを知ることができます。そして、実際に販売が成立すると、その広告を掲載している人に報酬を支払います。

たいした収入に繋がるわけではありませんが、少しずつ増えていくうちに、私のページを見に来る人も増加することを期待しています。

 

こういった努力は、どれもなかなか名案ですが、引き出しの中に眠っている作品がうまく旅立だってゆかなければ、私の食料を調達する助けにはなりません。

目下私の箪笥の引き出しは一杯なのです!百人一首シリーズが終わった直後に、全セットを追い摺してあり、すでに書きましたように、まだ一枚ずつ集めている方がいらっしゃいます。でも、もう何年も、このシリーズへの注文が来ていません。それで、全セット百枚のみを受け付けるという従来の方針を継続するのは苦しくなってしまいました。

私は、美しい版画を制作するのが好きですが、作品が引き出しの中で眠ったままになるのでは意味がありません。随分と葛藤を経た後、百人一首に限り、お好きな作品だけでも購入できるよう、単品売りをすることにしました。

要点は次のようになります。百人一首の作品は、単体でも10枚セットでも、100枚全セットでも購入できることにしました。

  • - 単品購入の場合、作品は固い台紙で保護し、透明袋に入れてお送りします。価格は1枚2万円です。
  • - 10枚を購入する場合は、中性紙に差し込む形で包み、ケースに入れてお送りします。すでに10枚セットのグループ分けをしてあるので、お好きなセットを中から選んでいただきます。(天皇1、女性2、僧侶1、大臣など6(内3つは立ち姿で3つは坐姿))ご希望であれば、御自分でこの条件にあてはまるようお選びいただくこともできます。1−2−1−6のルールです。1セットは1万5千円となります。
  • - もちろん全セットの御購入も可能で、その場合は上記の場合と同じ形態のケースが10個になります。価格は百万円で、1枚あたり1万円です。

この方針であれば、投げ売りのような形ではなく、すでにお買い求めいただいた方々のお気持ちを害することもないかと存じます。そして、より多くの方々のお手元に作品が届き、お楽しみいただけることでしょう。

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ここでひとつ強調しておきたいことがあります。今回の号では、私の経済状態に関して「悪い知らせ」をたくさん書いていますが、だからといって、当面の苦境に打ちのめされるようなことは決してありません! 現在も版画一本で生計を立てていますし、新しくアーティストとしての一歩を踏み出してから300枚ものオリジナル作品が売れていることを考慮すれば、一目置かれてもいいくらいの成果をあげていると自負しています。

おや、なんてことでしょう!お金と営業方針のことで、内容のほとんどを費やしてしまい、新作についてはまだ何も書いていません! 最新作は最後のページでご紹介します......なかなかいいでしょう?

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