デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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知識の咀嚼

私は庭いじりが好きで、ここ数日は夏に怠った雑草取りと冬支度に追われる日が続いている。庭の茂みに分け入り、黙々と鎌を片手に自分が植えた草花の間にのさばる「やっかいもの」を根こそぎ抜いてゆき、せっせとコンポストの中に放り込む。科学的な除草剤、殺虫剤はほとんど使わない主義なので、抜いた草は大切な資源として庭に戻されることになる。

雑草の処理について、長年腑に落ちない疑問があった。種の付いた雑草はコンポスターに入れていいものだろうか?何人かに聞いたところ、だめだと言う人と平気だという人がいる。本で調べてみると、理想的なコンポスターの中は高温になるのでほとんど腐敗してしまうとある。きっと平気だろうと、自分なりに考えて全て資源として利用していた。

そのうち、ちょっと知られている園芸家に会う機会があり、直接この事を聞いてみた。すると、「なんでも入れていい、中の温度が上がってみんな分解しちゃうから」という返事が返ってきた。やっぱり自分の思った通りである。私は自信を持って抜いた草は全てコンポスターに放り込み、魚と肉を除く台所の残飯と一緒に腐葉土の資源としていた。だが、どうもおかしい、いつまでも分解しない種類の葉があるし、暗闇のコンポスターの中でさえ、ほぼ必ず発芽する球根もあれば、腐葉土となったコンポストを撒いた部分に、恐ろしく繁殖する雑草が数種類あるのだ。やっぱりいかん!

このことにすっきり解答を与えてくれたのが、今回のデービッドのお土産の本であった。どっさり買ってきてくれた山の中から抜き出して読んだ「オーガニック ガーデニング ガイド」という題の本。この中にちゃんと書いてあった。種を結んだ雑草は混ぜるな、と説明があった。経験から照らし合わせて客観的に判断すえれば当然のことなのに、つかえ物がストンと流れたかのように、はっきりとした解答が得られて、ほんとうに気持ちがよかった。そんな訳で、今朝の作業からは、ふたつのバケツを側に置いて、分類しながら草むしりをしている。黙々と作業をしながら、こんなことを思った。

「私って頭が悪いなあ、何年も無駄な労力を作り出してきたなんて。考えてみれば、当たり前のことじゃないか...まてよ、これは一般論につながるぞ。知識は大切、人の言う事にもできるだけ耳を傾けた方が良い。でも、目や耳から入って来る雑多な情報は、咀嚼しなくっちゃ。ここが肝心。まるで同じ状況なんてないのだから、得た知識はそのままでは使い物にならない。いかに知識を利用して状況判断の手掛かりにするかが大切なのだ。とすると、現代は情報過多で消化不良を起こしている人が多いのかも知れないなあ。そうそう、知識ばっかり溜め込んで応用の効かない人を、俗に「頭でっかち」というじゃないか。あ〜あ、「賢い人」への道は遠い遠い!こんなしごく当たり前のこと、気付くには遅い程長く生きて来ちゃったけど、ま、気付かないよりましか...」

それにしても、デービッドにしちゃあ、なかなかいいガーデニングの本を買って来たものだ。私のガーデニングバイブルになりそう!もしかして彼は、...そうか、ちゃんと私を観察して、山のような本の中から選んでくれだんだ!賢いやっちゃ!

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