デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

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事業報告、2004年

昨年のニュースレターで、私の事業における基本的な収支と版画の発送枚数について事業報告をしました。今回はその続きですが、こうした記事を、今後も継続して定期的に掲載していくつもりです。収集家のみなさんは、私の事業を続けるための「株主」のような存在と受け止めていますから、その「経営」状態が健全であるかどうかを判断していただくための資料を用意するのが、道理だと思うからです!

(本来ならば、もっと早くこの記事を掲載するべきでしたが、載せたい事柄が多くてスペースがなかったのです。来年からは、できるだけもっと早い時期にお知らせするようにします。)

御覧になってお分かりのように、「百人一首」と「摺物アルバム」は終了していますが、それでも私の収入のかなりの部分を占めています。実際、こういった過去の作品を集めてくださる方たちがいないと生活していけない、というのが実情です。

「四季の美人」は、自分の予想を遥かに下回る人気で、その数は半分以下でした。でも、これをどう受け止めるかは考え方次第で、棚に残された版画がこれから何年か掛けて少しずつ売れてゆけば、私が溺れずになんとかやってゆく助けとなることでしょう。

収集家たちはどこに?

この表を見て、あまり驚くことはないと思います。まず百人一首は、歌について良く知っている人たちが魅力を感じるので、ほとんどが日本人です。そして、ひとたび作品の題材がより幅の広いもの、詳しく言うならば、歌よりも絵の方に主眼点を置くようになると、海外の人たちからの関心が高まりました。

驚いたことに(失望もしたのですが)、海外の人たちの関心度が「四季の美人」には繋がらなかったということです。私は、どの文化にも通用する作品集で、あらゆる地域に住む人たちに好まれると思ったのですが。

収支決算、2004年

面白い事に、総収入は安定していて、昨年もほとんど同じく1千万円台でした。前の年と比較すると、1%の以内の違いです。この年のシリーズ(四季の美人)の販売数がかなり減っていたので、これは救いでした。なんとか生活していける状態は維持したいものと、気にかけていましたから。

ところが次第に、その安心は心配に変わってきました。包装にかかる費用が急激に増加して、前年の総収入の5.5%から16%に跳ね上がってしまったからです。その他の必要経費は、ほぼ安定していましたが、このたったひとつの例外だけで、最終的に私の手元に残る金額は、表を御覧になればおわかりの数値にまで落ち込んでしまったのです。おまけに、ダブルパンチがありました。日本では、健康保険料や税金が前年度の収入を基準に決められるので、それらの出費が2004年にはとても負担になったのです。

こうした昨年の教訓から、収入と支出の不均衡をなくす方法を考えなくてはならず、その結果、2005年から作品の送料をみなさんに負担していただくことになったのです。この変更を決めた時には、何らかの抵抗があるのではないかと半ば覚悟していたのですが、そんな心配は無用でした。苦情を訴える人はひとりもいなかったからです。こうして送料を払っていただくことで、私の収益の額は大きく変わり、次回ここに掲載する報告書で、その効果を御覧にいれることができるでしょう。年間の郵送料はほぼ百万円近いので、作品発送の費用を埋め合わせていただくことで、なんとか生活していける状態に戻ることができるでしょう。

在庫目録

この報告書に、今まで公開したことのない、もうひとつの統計的資料を掲載することにします。すでに書きましたように、私の事業は、新企画とすでに終了して在庫となっている両方が同時進行しています。そこで、入手可能な版画について詳しくお知らせすることにします。

*百人一首
全百枚のみの販売ですが、現在の在庫は20セットです。また、以前十枚ずつをセットとして販売している時にご購入になられて、欠けている分を補充したい方が対象となりますが、十枚単位でお分けできる分もいくらかあります。

*摺物アルバム
第1集は、ご購入の予約をしている方の分を何部か別にして、すでに在庫がなくなりました。第2集も数が少なくなっておりますが、その他の集はまだたくさん在庫があります。

*四季の美人
すでに書きましたように、在庫はたくさんあります。

どの作品に関しても、購入の方法は、一括でも毎月1枚(2枚)ずつでも、ご希望に沿うことができます。ご相談ください。

全般的事項

以上が、2004年における実際の経理状況です。でも、この背後にある活動はどうなっているのでしょうか?「四季の美人」は、正直大きな挑戦でしたが、自分では、とてもうまくいったと思っています。今までに制作したどの版画よりも自慢のできる版画集となりましたから。実は、秋の部として口絵を復刻しようと決める時、果たして自分に復刻できるものか、まるで自信がなかったのです。あのような作品は、明治以来今日まで、手掛ける人がほとんどいなかったほどですから。でも、でき上がったばかりの作品を手に取って見つめた時には、挑戦したのは間違ではなかったと、自覚することができました。

日々の生活は、さあ、どう言えばよいのでしょうか。私の365日は、いろいろです。ほとんどが好きな仕事で(たくさん)過ごしていますが、貞子さんと一緒の時間もあり(不足気味ですが)、家族と頻繁に連絡を取り合ったり、収集家の方たちや友人との交流もしています。

もちろん、なにもかも満足というわけではありません。室内が凍えるほどの温度になることもありますし、一日の仕事を終えるのが真夜中近くになったりすると、こんなことを思ったりもします。「一体僕は、どうしてこんな生活を続けているんだろう!」でも、全体としてみれば、ストレスの少ない生活です。目下最大の「問題」といえば、来年の企画をどうするかなんですから!制作者側の私と収集家の双方にとって面白く、しかも経済的にまかなえる程度の企画を考えなくてはなりません。

この「問題」だって、きっとなんとか切り抜けられるはず。次回のニュースレターを読んでくださいね!

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