デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

41号から最新号まで

1号から40号まで



Categories:

課税方式の変更...

日本ではここ数年、税金に関する議論が盛んです。私達の社会を取り巻く大きな変化があるので、政府は公共経済の構造を見直さなくてはならないからです。ちょっと前に受け取った地元の税務署からの知らせには、収集家の方達にはあまり喜ばしくない内容が書かれていました。中小企業に対する消費税納付規定の例外が廃止されて、私はもうその適用を受けることができなくなるからです。来年から、私の版画に消費税を加えなければならないので、今まで 6,000円の価格でしたが 6,300円になります。(これは日本国内に住むお客様だけで、外国向けには課税されません。)

私個人としては、もっと以前に変更が行われるべきであったと思います。なぜなら、中小企業への適用例外を誤用しているケースが多いからです。年収3千万円(1日平均80,000円ちょっと)以下の企業は、消費税を政府に納めることを免除されますが、ほとんどの企業は税分を取り続けて、それをそっくり懐に納めている実情です。私は、版画の材料全てにかかる消費税を支払っていても、収集家の方達に負担の肩代わりをお願いせずにやってきました。でも、私にも納税義務が出てくると、このままではやっていけないのです。

課税制度の見直しが行われている事は誰もが知る所ですから、こうした変更があることは、予期していました。それで私は、今年に入って新しい帳簿を考案する準備に取りかかっていたのです。長年お客様を信用する会計方針でやってきましたから、版画を送ったら支払ってくださるのをただ待っているだけでした。年度の終わりになると、入ってきた金額を合計して諸費用を差し引き、差額を収入として計上した上で所得税を支払ったのです。ですから、時たまお客さまから、「デービッド、あの版画のお金支払ったかしら?」と聞かれても、的確な解答ができませんでした。支払われたかどうかを記録していなかったのですから。なんとも非実務的なやり方ですが、私の繊細な版画を気に入って集めて下さる方達は、性格も同じく几帳面で代金はきちんと支払ってくださる、ということが経験上わかっていたからでもあります。

このような経理方針が賢明でないのは当たり前ですが、私としては、完璧に使いこなせる帳簿を考案したかったので、時間の取れないことを口実に作業を伸ばし伸ばしにしてきていました。ところが、課税制度の変更が目前に迫ってきたのでは、重い腰を上げざるを得ません。税務調査が入ってから大慌てする始末になったのでは大事ですから!  そんな訳で、現在のコンピュータープログラムの方式を調べるという下準備をしてから、顧客に関する事務処理全般が私のマックでできるよう、包括的ソフトを自分で作りました。

そのソフトは、収集家全員の名前と私の制作した作品全てを「知って」いて、誰がどの版画を集めているかをきちんと記憶しています。そして、どの版画を誰に発送すれば良いかを市川さんが分かるような表や、各々に同封する納品書や振り込み用紙、そして宛名のラベルも、必要な資料は全てそこから引き出せます。資料はすべてバイリンガルになっていて、国内の収集家には日本語で、外国の方には英語でお知らせします。郵便局あるいは海外から送金されてから、納品控えと適合させるのはとても簡単です。また、支払われた消費税はもちろん記入されていますから、納税制度が改正されればすぐに納付することができます。

ソフトを作るのは、結構楽しいものでした。ほぼ20年前に似たような作業をしていますが、以来プログラミング分野では大きな変化があったことが良く分かります。現在利用できるコンピューター言語のお陰で、単調な骨折り仕事は随分と省くことができ、作業をするのがもっと面白くなっています。プロのプログラマーとして開業するつもりはありませんが、こういった仕事をする能力も、伝統的職人が生き残って行くための大きな助けとなるのは確かな事... 現代ではおそらく、両方をこなせる能力が重要なのでは...。

ひとたびシステムを可動し始めると、何年も以前に音楽店で納品書を作るプログラムを作った当時を思い出さずにはいられません。「ハリファックスから羽村へ」の中で、私はこう書いています「プリンターから流れ出てくる請求書の山を見たときは感無量でした。」(45号より引用) そして今、自分の事業で同じ感動を味わっています、「山」では誇張し過ぎになりますが!

コメントする