デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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展示会報告

日本に、13という数に関しての迷信があるのかどうか、これについて聞いた私の記憶は定かでないのですが、西洋ではかなり意識します。13は縁起の悪い数なんです!展示会を前にして、ある英字新聞社のインタビューを受けていた時のことです。今回の展示会が13回目になると言うと、その記者は、縁起の悪い数を「心配」しているかと聞いたのです。そんな事は考えてもみなかったので、私はただ笑うだけでした。近所で飼われている、私が「ブーツ」と呼んでいる猫がいるのですが、最近はこの猫がほとんど我が家で過ごしていて、それでも、私はこの黒猫になんら疑わしい気分を持ったことがなかったほどですから!西洋には、黒猫が目の前を通ると不吉なことがあるという迷信があるのです。

けれども、もしも、あの時の記者が展示会の後にもう一度やってきたとしたら、おそらく今度は違った答え方をしていたでしょう。正直なところ、今年の展示会はついてなかった、と。私に関してのマスコミの取り上げ方は今回も様々でした。テレビやラジオの方からは出演の依頼がなく、新聞にもあまり載りませんでした。でも、読売新聞が、全国版となる正月特集の中に私の記事をいち面全体に載せてくれたのです。これはとてもありがたく、今回の展示会はこの記事のお陰で救われたようなものでした。会場には、この記事を読んで来たと言う人が、かなりいたのですから。

そういった訳で、来場者の数はそう少ないこともなく、会場では、自分の仕事の説明をしたり奥の方に設置した作業台で簡単な摺りの実演をしたりして、結構忙しく過ごしました。私にとって展示会のある週というのは、いつも「休日」のようでもあるのです。仕事場から抜け出て、寸暇を惜しんでの彫り・彫り・彫りの圧迫感から解放されるのは、とても良い気分転換ですから。こうして、来場者の方はまずまずでしたが、作品の予約という点になると、話は別になってきます。予約という観点からすると、今回は、今から丁度10年前の1992年に初めて新宿で開催した展示会以来の低迷でした。展示会の費用をまかなうはおろか(高野ギャラリーの使用料は1日当たり10万円です)、続く1年の活動費にもほど遠い額の注文しかなかったのです。この苦境をしのぐ助けとなるのは、当然のことながら、昨年から継続して予約購入をしてくださる収集家の方々です。2月になって私は、この人達に、もう1年継続してくださるかどうかをお伺いする葉書を送りました。「継続」の方に丸を付けて送られてきた葉書がほどほどの数に達したので、見通しのできる将来までは、なんとかやっていけそうです。2002年は、あまり景気の良い年になりそうもありませんが、立ち行かなくなる心配はなく、計画した通りに仕事を進めて行くことができそうです。(このニュースレターは、いつもよりちょっとスリムになりますが)それに、「摺物アルバム」第4集に取りかかる前の2月には、ちょっとした休暇をとることだってできたのですから。

こんな結果を皆さんにお知らせして、「泣き言のブルース」を奏でている訳ではありませんよ。昔からよく言うように、これは「半分満たされていれば、半分はからっぽ」の論理なのです。「展示会の結果にがっかりした?」と聞かれれば、答はやっぱり「Yes」です。でも、この反対の面を見ることも忘れていません - こうして新居に暮し、好きで興味の尽きない仕事に日々取り組み、しかも、この活動を支えてくださる人達が日本全国だけでなく世界中にいるのです。そして、何百何千という見事な版画を年ごとに創りだしています。この状況になんの不足があるものですか!昨今の不況で、ここ10数年間というもの経済は年ごとに落ち込んできている中、私は版画製作者としての収入だけで、今も生計を立てているのですし...

お願い、つねらないで下さいよ、目を覚ましたくないですからね!

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