「はい、子供は寝る時間ですよ」、2階に追い立てられて、ひとり布団に潜り込む。階下からは、大人の声。時折は楽しそうな笑い声。「どうして笑っているのだろう。何がおかしいんだろう」と耳を澄ませながらも、関心はしだいに天井板の節の方に移る。じいっと見ていると、大小様々な形の節や木目から、いろいろな絵が見えてくる。ひょっとこ、おかめ、鬼 ... 。横をみると、襖には唐草模様があり、それが、天狗になったりチョウチョになったり。目を細めたり、焦点をずらしたりすることで、様々な像が見えてくる。
いつの頃からだろうか、こんな遊びをしなくなったのは。明かりを消して眠るようになったので、目を閉じて、ぼんやりとしながら眠りに落ちていくようになった。そして今は、必ず本を持って床に入る。もう疲れきっている時でも、ほんの数行に目を流しているうちに、本を持つ手に力が入らなくなり、それを塩に明かりを消す。あとは、数秒で眠りの世界に入る。
それから夢。子供の頃は良く夢を見た。走っても走っても前に進まない夢、助けを呼ぼうとしても声のでない夢、大御馳走を食べようとしたら消えた夢、人生を2倍生きていると思える程にいろいろな冒険をした。
ところが、ここしばらく私は夢を見なくなった。ストンと眠りに入ったばかりなのに、目覚ましが鳴り、新たな一日が始まる。つまらないなあと、例によって話題を持ちかける。そう、デービッドの「夢物語」でも聞かせてもらおうと水を向けると...
「ごめんね、僕まくらに頭をつけると数秒で眠っちゃうんだよ。」「眠れない時は....?」「ごめんね、僕そんな事ないんだよ。夢も覚えてないし...」
根っからの健康児とはこういう人の事を言うのだろう。観察していると、確かに目一杯生活している。目が覚めている限りパワー全開で動き回って、スイッチオフでドタンキューという訳なのだろう。
ところが、ところがである、この「仙人」も寄る年波には勝てないと見た。「ねえ、日本語でなんて言うの?あのさ、お湯を入れて布団の中に置くもの」 無理もない、小川からの冷気が上がってくる新居は、青梅の中でも格段の寒さだもの。新居で向かえる2年目の冬か。しめた!今年のクリスマスプレゼントは.....
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