デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

41号から最新号まで

1号から40号まで



Categories:

うら話

男性が半世紀ほど生きてくると、眉毛の中にヒョロッと長めの毛が混じり出す。はて、これは頑固の度合いのバロメーターであろうか。高島屋恒例の催事、特別参加の時もデービッドの基本姿勢はガンとして変わらず、作品はすべてセットで販売する事になった。

まず大阪。何ぶんにも50程の出店が居並ぶ大会場の一隅、難波店での反応はいまいち、作品を見て「へえ、これ木版画みたいなものですか?」などととんちんかんな質問に当惑する一場面もあった。

売らんかなの姿勢はデービッドに最もそぐわない。長年手伝ってきている私だから、分かってはいるものの、時折は気落ちしてデービッドの方を見る。と、何の事はない、「武士は食わねど高楊枝」。気弱な私は「すべて経験、これも経験」と呪文のように唱えるばかり。

前の店では、中年の御夫人方が熱心に中腰の姿勢でショーケースの中を物色している。売り子がお札を手に駆けずり回る。一段高く設えられた場所で、摺りの実演をするデービッドの目の位置が、ちょうど御夫人方のお尻と同じ高さ。面白くなさそうなデービッド、実演の見物人が多ければガードとなるのだが....。

京都では、人々の反応は随分と違い、興味を示してじっくり作品に見入る人が多くなった。が、売れ行きは停滞気味。しびれをきらした担当者は、見るにみかねて、
「デービッドさん、良い考えがありますよ。バラ売りをすれば....」
デービッドはすでに2本だけ、長い眉毛を貯えている。だから、
「ですが〜、私は.....」

そんな催事でも、ひと目みるなり「ひゃ〜素敵やわ〜」と見入る人もちらほら。私達を元気づけてくださるにとどまらず、セットでお求めになるお客様も数人現れた。

今回の収穫?難波と京都の土地柄に触れられたことはもちろんだが、生っ粋の職人さんとの交わりが貴重な体験。これからも連絡を取りつづけていきたい友を得たことが、何よりもうれしかった。

コメントする