デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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Mr. Julio Rodriguez

このコーナーはもう終っていたのかと思いましたか。そんなつもりはなかったのですが、途絶えてしまって申し訳ありませんでした。お休みしていたのは、ただ単に、私の予定が詰まりっぱなしで、やり繰りが難しく、出かけて行って人に会うだけの時間が取れなかったからなのです。

でも、ついこの間やっと気付いた事ですが、実際に面と向かって会わなくても、その人となりは分かるものです。今月の記事がその良い例で、私はフリオにはまだ会ったことがありませんし、電話で話をしたこともありません。では、どうして彼を知っているのか?それは、ここ数年の間に、なん百回(なん千回)も電子メールのやりとりを続けてきたので、コンピューターの画面の向こうにいる、彼の人柄をつかんでいると思うからです。

* * *

フリオとは、彼が「バレン」というインターネットの版画グループの会員になったとき、初めて出会い(?)ました。これは、私が1997年に設立したグループです。当時の彼は、まだ自分で作ることはしませんでしたが、版画にはかなり興味を持っていて、関係書をたくさん読んでいました。このグループには、版画を専門にする人から、しろうと、学生、あるいはただちょっと版画に興味のある人まで、いろいろな人がいました(現在もそうです)。でも、私としては、このグループに参加すると、今まで版画など作ったことのない人でも手を染めるようになる、ということを密かに期待していたのです。フリオは、この私の思いが実現した良い例でした。

やがてこのグループは、版画交換会を始めました。一回の参加者は30人で、各々が30枚の版画を送ると、それが分配されて、結局は自分の所に30人分の版画が戻ってきて、ちょっとしたコレクションができるという仕組みです。フリオは、率先して最初の交換に参加しました。そして、版画への興味を具体的な形にして示したのです。交換会は成功し、彼の努力も報われました。それから3年がたった今、彼は過去9回の交換会全てに参加した唯一の会員となったのです!彼がプロの版画家になろうとしているとは思いませんが、そんな事はどうでもいいのです。版画を作るという行為が、彼の人生に実りをもたらすのであれば、それで十分なのです。

どんなグループにでも、人が集まれば、「多弁派」あり「行動派」あり、というものですが、フリオは最初から、会の運営にとても貢献してくれて、すぐになくてはならない人材になりました。私は、数えきれないほど彼と電子メールのやりとりをして、人柄がだんだんに分かってくると、はっきりと彼が次のようなタイプの人なのだということが分かってきたのです。つまり、グループのために何かしなければならないことが起きた時には、フリオに頼めばきっと手助けをしてくれる人だということです。(昔のことわざが現代でも通用することを証明しています。「なにか用事ができたら、一番忙しい人に頼みなさい」)彼は常に意欲的な会員で、自ら率先して、2度もグループ展示会を開催しました。会場捜し、額縁の手配、などなど、損得感情はまるで抜きにして。

フリオは、私と同じく、自分で選んだ国に移民しています。彼の場合はキューバからアメリカに行き、現在は妻と息子達と共にシカゴ郊外に住んでいます。彼にとって家族はとても大切ですから、メールではこんなメモを何度も受け取りました。「デイヴ、今すぐには答えられないんだ。やんちゃ共と野球をしに行かなくちゃならないから」そして、後から返事が来るのですが、そこに記録された時刻は午前の2時などになっています。「....用事は.....一番忙しい人に.....」しかり!

フリオのような人が、「摺物アルバム」の収集家に加わると、多面的な動機を私に与えてくれるという意味で、私の楽しみは増加します。まず、作品を集めてくれるということで、私が目的を達成する手助けになり、次に、作品その物の美しさを喜んでくれ、加えて、彼自身の技術が向上するための教材としてていねいに鑑賞しているからです。これ以上の何を、収集家に期待できましょうか.....

フリオ、協力をありがとう。版画製作が、君に、もっともっと楽しい時をもたらしますように!

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