デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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展示会の総括

毎年この時期は、知り合いに出会うたびに同じ質問をされます。「どうでした?」と。もちろん、終わったばかりの展示会のことです。いつもは返事に困ることはありません。3年前は、遅れたかに首をふるばかりでした。そして過去2年は、満面の笑みをたたえて「素晴らしかったです!」と答えました。しかし今年は、どう返事したらいいものかわかりません。マスコミは、期待したほどの反応がありませんでした。私の展示会は、毎年繰り返される「同じネタ」なのです。でも、それほど大きく取り上げられなくとも、いくつか好意的な記事が載り、東京でも大阪でも大勢の入場者がありました。

「ビジネス」という面から見ると、今年は首をひねることがありました。前回までは同じパターンでした。つまり百人の観客のうち、3人の方が年間の予約をされます。最初の展示会では、お客さんは90人だけでした。7年前のことです。そのうちの3人が申し込みされました。このパターンは毎年変わりませんでした。観客が少なければ注文も少ない。多ければ注文も増えます。昨年はおよそ8百人が訪れ、24人が注文してくれました。3パーセントという数字は変わりません。でも今回は突然、このパターンが変わりました。観客は昨年よりちょっと少なかった程度ですが、新たに申し込まれたのは5人でした。

「たった」5人、などというつもりではありません。ギャラリーに座っている私は、お客さんが入るたびに「この人は注文するだろうか?」と様子を見ているのだ、などという印象をもたらたら困ります。もちろん、どなたでも、購入を決心されて、この仕事を援助しようと思われることはとても嬉しいです。ギャラリーに展示されている作品を見ていただいて、感想をお聞きするのが嬉しいのです。版画を百セットずつ制作しているのは、商売のためではありません。自分がちょっと変人だからです。「セールスマン」になるつもりは少しもありません。他のギャラリーや店から、作品を卸さないかと声がかかったことがありますが、断固として断りました。そんなやりかたはちょっとも楽しくありません。あたかも壁紙のように版画を売るなんて...。

今回、申し込みが少なかったのには二つの原因があると思います。全体的な不景気の影響が「責められる」べきかもしれません。あるいは、すでに「隙間が埋まって」しまったのかもしれません。私と同じくらいに変った人々が出尽くしたのかもしれません。ささやかな色つきの紙にお金を払うなどという変な人たちが...。そうだとしたら、7年前の見込み、必ずそういう人たちがいるはずだ、この仕事が完成するまで、私と家族の生活を支えてくれるだろう変な人たちを見つけることができるだろう、という予想は見当違いではなかったということです。あと3回、展示会が残っていますが、最後の回が終了する時に、ついには「百人一緒」が実現できるでしょう。百人の方々が、百人の変な人たちが一同に集まることでしょう。

ですから何も不満はありません。展示会に見えて楽しんでいただいた方々、ありがとうございます。春章の素敵なシリーズをお見せできてとても嬉しいです。ご親切な「頑張れ」というご声援が、この仕事の間中、私を励ましてくれます。ご注文いただいた方々、ありがとうございます。(大家さんが、私の行きつけのスーパーが、仕事を支えてくださる職人の方々が感謝しています。大勢の人たちが感謝しています!)可能な限り最良の版画を作ります。皆さんを失望させないように。

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