デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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私は、古風でデリケートな手法で木版画を彫っていますから、目はとても大事にしないといけません。仕事台には十分に光をあてて眼精疲労を避けるようにしていますし、目が疲れてきたらすぐに休憩します。

しかし、私の仕事にとって、耳も重要だということをご存じですか? おそらく目と同じくらいに大事です! この座布団に座って彫りを進めている時はいつも、私の耳には、固いサクラの板を彫刻刀の刃で削る音が響いています。そのような音を聞いたことがありますか? とても注意深くその音をとらえないといけないのです!

この微妙な音を聴けば、彫刻刀の刃先が鋭いか鈍いかがわかります。″仕上げ砥″できちんと研がれていれば、版下の線に沿って軽くなぞるだけの音がかすかに聞こえます。一方、研ぎを怠ると彫刻刀は板を少し傷つけますから、私の耳は何か問題があるのだと教えてくれます。よく研いだ彫刻刀とそうでないものとの違いは目で見ることはできません。でも耳は違いを教えてくれるのです。

ですから私は視力ばかりでなく、聴力にも注意していなければなりません。20代の時にロックンロール・バンドで過ごした時間は、それほど長続きしなかったことがよかったようですね!

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