デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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黄金時代

しばらく前に、私の母が来日していました。二人の孫に会うためにイギリスからやって来たのです。 1ヶ月ほど滞在し、ほぼ毎日、子供たちが学校に行っている間に、随分遠くまで出歩いていました。

母はもちろん、日本語は少しも話せません。しかし、可能な限りにあらゆるものを目にしたり、人々に出会うのに、このことがさまたげにはなりませんでした。

母にとって、日本とイギリスのコントラストは驚くべきものでした。母の目には、現在の日本は黄金時代を迎えているようにうつりました。私が幼い子どもだった40年前のイギリスと同じように。通りは安全で美しく、誰も仕事に忙しく、人は互いに助け合おうとし、教育水準は高く、公共交通機関は申し分なく、ものごとがうまくいきそうな気配があるのです。母は、イギリスの現状と比較してみましたが、どれ一つとして現在のイギリスにはないと言います。

50年ほどで、この島国に住む人々はとてつもないことを成し遂げました。戦災で瓦礫と化した国から、誰もが、幸福への道を見いだせる自由を与えられるような社会になりました。見返りとして要求されるのは、道は「両方向通行」であり、自由には責任がともなうことを肝に銘じておくことだけです。

世界中のあらゆる国のことを考えましたが、責任と自由のバランスがうまくとれている現在の日本のような国はほかにありません。私から見れば、多くの日本人が、自分たちが作り上げ、そこに暮らしているところこそが「天国」だと気づかないでいることがとても悲しいのです。でも...この環境を私と、そして母と分かち合っていただき、皆さんにお礼を申し上げます。

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