デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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Larry LaCoss氏ご夫妻

どなたであれ、私の作品を購入しようと決心してくださる方がいることはとても嬉しいのですが、同じ方が 2度、私のお客さんになってくださることはめったにありません。この仕事にとりかかって 2年目のことです。ある日、大阪在住のアメリカ人の会社員から電話がきました。私の記事を新聞で読み、もっと詳しいことが知りたいというのです。しばらく話しをして、私は版画の見本を何点か送りました。そして彼と奥さんはお客さんになりました。残念なことに、二人のことをもっと知る機会がないまま、二人ともアメリカに戻ることになってしまいました。これで私たちの交流も終わるかに思えました。去年の暮れ、葉書きを受け取って驚きました。二人がまた日本に帰ってくるばかりか、今度は福生市に住むことになると言うのです。私の住んでいる羽村から自転車で10分ほどの距離です。

それ以来、ラリー、ユキ・ラコス夫妻と知り合う機会が何度かありました。二人がどんなタイプの人間かといったことを説明したいのですが、うまく理解してもらえないかも知れません。この地上にいる限り、人生を楽しむといった感じのカップルです、と言ってしまえば、二人は祭好きの人間だと思われてしまうでしょう。でもラリーとユキは真っ正直な実業家であり、様々な仕事と社会活動、地域活動に従事しています。二人の人生哲学は実は単純なことです。「この世界は素晴らしく、美しい。人生を楽しむばかりでなく、出来る範囲で社会に貢献する責任を誰もが負っている」二人の所から帰るときはいつも、元気をもらってくるように感じます。精神的な「疲労回復剤」のようなものです。何をする時でも一所懸命な二人の熱意がうつるのです。知り合って間もない頃、二人の活動をおおまかに、こんなふうに見ていました。キャンピングカーやバイクでアメリカ中を旅行し、日本でも同じことをするための準備をし、男性合唱を楽しみ、援助が必要な若いアーティストの作品を購入し、自分でも絵筆を握り(ラリー)、アクセサリーを収集し(ユキ)、さらに仕事にも没頭する。

二人の仕事はうまくいき、その結果、人生哲学の別の側面を実践することができるようになりました。楽しんだことを、社会にお返ししなければならない、という気持ちが生まれました。たとえば私の仕事を援助したり、教会活動をすることなどです。ラリーが宗教のことを話した最初の時、正直に言うと、私はちょっと緊張しました。クリスチャンは時として、信仰に忠実なあまり布教的になることがあります。でもラリーはそんなことはありません。それどころか、宗教が個人の力、喜びの源になっているという見本のようなこの人物は、どんな説法も及ばないほど魅力的な「宣伝」になっているのです。

この面白い二人と、もっと一緒の時間がとれればいいのに、そうすれば、いかに二人が人々をくつろいだ気持ちにさせることができるかという見本になるのに、と前回別れるときに二人に話しました。私のお客になってくれて版画を買ってくれたことにたいするお礼を言おうということさえ、私は考えませんでした。「じゃあ、また」。ただこんなことを言っただけです。ラリーとユキは「お客」ではありません。二人は友達です。皆さんも二人と一時を過ごすことができればいいのに、と思います。そうすれば人生がもっと豊かになるだろうと思います。

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