デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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その11:最初の一年間

(前回からの続き)

この企画の最初の年の終わり数ヶ月は、この仕事すべての面でよい進歩がありました。英語教室に週30時間費やしていましたが、 1ヶ月 1枚のペースで版画を作ることができました。彫りに 3週間、摺りに 2〜4日要していました(その時にはほんの数人のコレクターの方々がいるだけで、20枚ばかり摺っていました)。

この頃の一つの興奮する出来事は、私が最初の本物のバレンを手にしたことでした。前のニューズレターでバレン職人五所さんの所を訪ねたことは書きましたから、新しい道具に対しての私のうれしい気持をわかって下さると思います。摺の質はたちどころにひやくをしました。一つにはすばらしい道具にあり、又一つには単にそれを所持しているという自信からでした。進歩というものが"買える"といった単純なものだといいのですが。

羽村に最初に来たとき、木版画のサークルが公民館で活動していましたが、自然に消滅してしまいました。11月の文化祭では、版画作りの企画はなかったので、私がボランティアとして版画製作のコーナーを設けました。子供達が何かしら学ぶことができるのではないかと思ったからです。私は簡単な版を彫り、ブラシ、顔料、紙を用意し、テーブルをセットして子供達が自分で摺って版画を作れるようにしました。版画コーナーは大成功で、長い列ができました。これは羽村文化祭の恒例になり、子供達は今年はどんなデザインかなと熱心に集まってきます。(もちろん 千年も前のテーマではありません。今までの最大のヒットは、子供人気映画『トトロ』のキャラクターです。)

その年の他のおもしろい出来事は、クリスマスの日のNHK イブニング・ニューズに出たことです。その後、いろいろな種類の番組に出演することになりますが、それが最初のものでした。【挿入(宣伝!): 私の仕事についてのテレビ出演には複雑な気持ちをもっています。もちろんそのような機会は気分がいいですが、家族へのテレビの影響は好みませんので、家にテレビを置くことを拒否しています。これは子供達の不興をかうし、テレビプロデュサーはおどろかれます。もちろんテレビも時として有益ですが、マイナス面の方が多いと思います。家族のコミュニケーションがなくなり、悪い影響にさらされ、信じられないほど大きな人生の一部が、考えることなくテレビを見ることによって失われます。誰にそんな時間がありますか。私達は働いたり、勉強したり、遊んだりといそがしく、テレビは全く必要としないです。ためしてみて下さい...あなたのテレビをすててしまってみて下さい... 宣伝終わり...】

その年のおおみそか仕事場に心静かに座り、彫りをしながら過ごしました。その夜おそく除夜の鐘が流れます、私は相変わらずです。猿丸大夫の着物の柄にそって丸をたくさん彫っています。たいへんよい年でした。一方では、収入よりも版画製作によりお金を費やしており、食べていくのがやっとでした。又私はいそがしすぎて、やるべきことをやるのがやっとでした。しかし私の長い旅に真にかかわっていたので、後戻りする気はまったくありませんでした。最終的にはどこに行きつくしっていましたが、どの道をとるかはわかりませんでした。新しい年には何がおこるでしょう...

... 続く ...

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