デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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その8:2番目の作品

今月の話は、ドラムの音で始めましょう...ファンファーレ...全段一面見出し...版木届く! それは、実際よいタイミングでした。

というのは、版木が届く少し前に、とうとう版下をうまく準備することが出来るようになったからです。東洋文庫で写してもらった小野小町の小さなネガフィルムを用いて、実際の木版画サイズに引き伸ばしたカラー写真を注文しました。 それが届くと非常に薄い紙にコピーをとることができました。(その過程は、『百人一緒』1号に説明しました。)不明な細部は細いペンで、書き足し、彫りが可能な版下を作ることが出来ました。それは、そんなによくありませんでした。ネガフィルムが小さすぎて、写真はぼやけていましたが、それを使わざるをえませんでした。さあこれで始められます!

私の日記によると、小野小町の墨版の彫りは、3週間(実働70時間)かかり、その後の色板には 2日かかりました。天智天皇は一年かかりました。動機の問題のようです...

彫りの合間に三千代と私は、版木の代金を払ったり将来の版木の入手について話し合う為に島野さんの所へ寄りました。(この時に偶然前回のニューズレターに書きました*の店、金子商店に行き当たりました)。島野さんは、もっと定期的に版木を送って下さると請け合って下さいました。そして今まで、他の注文でどんなに忙しかったとしても、私がお願いするとうりに毎月送って下さいます。たぶん島野さんは、私の版木を準備するのにどんなにか長時間働いているかと思うと申しわけなく思います。 私を助けてくださっている職人さん達のうちで島野さんへの借りが一番大きいです。少しでもお返しする一つの方法として、新しく出来上がった版画を彼の所へ送っています。(山口さんや、松崎さんにも同じようにしています)。これらの職人さん達から見れば私の版画はあまりよくないとはわかっていますが、私は彼らの努力の最終産物を見ていただきたく思います。とくに版画が月々よくなっていくのを見ていただきたいと思います。

私は、彫りに一生懸命であると共に、この企画の他の面もいろいろやっていました。天智天皇の版画を作っていた時に三千代が撮った写真を貼った、私の活動についての短い宣伝用のチラシを作り、いろんな新聞社に送りました。(その時のチラシのコピーはファイルしており、今読んでみると、実際に 100枚の版画のセットを作ろうとしていますと書いてあります。天智天皇の完成と小野小町の彫りが終わった頃に百人一首シリーズを作ることを決めたようです。)

チラシに対して新聞がどんなことをしてくれるでしょうか。私にはわかりませんでしたが、何かをしなければならないとわかっていました。もし私が単に静かに仕事台に、向かっているとしたら、版画は確実に作ることができますが、家賃を払えるでしょうか。どうにかして人々の注意を引く必要がありました。

そこで今度は、版木を待つかわりに、電話がかかってくるのを待っていました... こんどはどれ位待ったなければならないでしょう...

... 続く ...

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