デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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職人組合

小さな看板が私の仕事場の入り口に掛けてあります。それには『東京木版画工芸組合員』と書かれています。私は、昨年の春からこの組合に属しています。以前から組合の集まりには時々出席しており、組合に入ったらということになりました。私が一番新しいメンバーです。

名称からおわかりのように、組合員は、伝統的な版画製作に携わっている職人達で、仕事はこれらの人々の間で分業になっています。 約10人の彫り師(摺りはしない)と少し多くの摺り師(彫りはしない)、それに加えて、版木職人の島野さんや、ドーサ職人の美澤さんです。言う必要がないことですが、新しくメンバーに加わる人はまれです。組合員は年々減少し、若い弟子はほとんどなく、年令が離れています。組合の集まりの時にまわりを見まわしてみて、私は又、若くなったような気になります。(実際には、一番若いメンバーは私ではなく、松崎さんの息子さんの浩繁さんで、彼は20代です) 組合員のほとんどは、その仕事について何世代も家系をさかのぼることができます。彼らは誰から代々技術を受けついできたかということを、かなり意識しています。昔は、たぶん違った流派の間で競争したに違いありません。 そしていくつかの秘密の手法を他の人には教えないようにしたでしょう。しかし今ではそのようなことはないと思います。

私が6年前に日本に来たのは、この職人グループとコンタクトをとる為でした。せっかく日本に来たのに実際にはこのグループのどなたともほとんど一緒に過ごしたことがありません。それは、単に生計を立てる為に忙しかっただけではなく、これらの職人さん達は働らかなければならず、時々はよろこんで私を手伝ってくださろうとしますが、頻繁に仕事のじゃまをされるのは好まないからです。 とくに彫り師はそうです。私の経験からわかりますが、仕事場への訪問客は、時として集中を乱します。それは、私が最も細かい部分の彫りを夜に行う一つの理由です。これらの職人さん達の仕事場へは近いのに遠いということは時として欲求不満にさせられます。

私の日本語は、職人さんを訪ねる機会がある時、私に話してくれる重要な部分を把握出来るレベルに除々に近ずいています。そしてこの企画が続く間、私はかれらの歴史や活動について書いていきます。おもしろい話が沢山あり、もし私が掘り出さなかったら誰がするでしょう。

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