デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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その5:版下の問題

(前回からの続き)

最初の版画がうまく出来あがり、大きな城を空中に描くのに没頭していましたが、実際は次の二ヶ月ばかりはいらいらさせられることになりました。主な問題は、次の版画を彫る為の版下を手に入れるのが難しいことにありました。白黒写真(ブロマイド)が、東洋文庫の仕事をしているマイクロフィルム会社からとどきましたが、それは不適切なものでした。赤や茶色のような強い色は強く再建され、墨の線との見分けがつかなくなりました。そのうえ、カメラに何か欠点があり、白い汚れがそれぞれの写真についており、その汚れの一つは小野小町の目をおおっていました。これがワンストライク。

前に版木を作っておられる島野さんを訪ねたおりに、彫り師の石井さんにお目にかかっていましたので、三千代と私は、もしかして彼から版下作りについて何かいい情報が得られるかもしれないと思って訪ねてみることにしました。彼は、ストリップフィルムをすすめて下さいました。それは、薄い写真フィルムを透明なプラスチックにくっつけて、拡大して現像後、薄いフィルムを版木に貼りつけます。石井さんは、その作業によくなれている印刷会社を紹介して下さいました。印刷屋さんは、ストリップフィルムを作るのに小野小町のカラーのネガを持ってくるようにと言われました。

そのネガを注文する為に東洋文庫に戻りました。今回は、私が直接マイクロイルム会社の代理人と話し、その方法を検討し、何も問題がないことを確かめました。うまくいきそうな感じです。英語クラスに戻り、待ちました。山口さんからの和紙と、島野さんからの版木とそしてネガを待ちました。

一週間後、郵便でネガが届きました。そして又、失望することになりました。それらは他の会社がやったもので、私の要求を理解してなく、ハーフサイズで写しており、いい拡大写真を得るのは不可能でした。二つの会社が東洋文庫の仕事をしており、 1日おきにかわりばんこに注文をとっているようでした。私の注文はちがった会社にいってしまったのでした。拡大してもらって、印刷屋さんがストリップフィルムを作りはじめました。四週間後、ついに彼から連絡が入りました。そしてその結果、それはまったく役にたたないものでした。細かい所はぼやけ、赤と黒は見分けがつきませんでした。ツーストライク...

何年か前、このシリーズの企画が始まる前に、三千代と私は、練馬区の木版画の版元の佐伯さんを訪ねて、何枚かの版画を購入したことがありました。その時彼はとても親切にして下さいましたので、彼にお目にかかって版下の問題について何かアドバイスをいただけないかと思いました。私達は、そこでとても楽しい時間をすごしました。彼は、明治と大正時代の信じられないほど細かく彫られた版画を見せて下さいました。それらの版画を見ることは、本当に目を開かされる思いがしました。そしてそれは、私がいかに長い旅に乗り出したかということを思いしらせてくれました。  佐伯さんのアドバイスは、もっと大きなネガ(4x5インチ)を手に入れることでした。これによって非常に鮮明な像を版木に再生することができるでしょう。翌日、このようなネガが出来るかどうか、マイクロフィルム会社にたずねました。会社は、やってくれるということですがちょっとした問題がありました。一枚 13、000円かかるのです。私達にはその時点ではそれはまったく無理なことでした。スリーストライク。

全部が全部悪いニューズというわけではありませんでした。 2月の終わり福井県から荷物が届きました。山口さんからの 100枚の美しい手漉の越前奉書でした。今は、彫る為のデザインと、板があればいいだけです。これからどうしたらいいでしょう...

... 続く ...

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