デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

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読者からのおたより

このささやかなニューズレターも、第四回目の発行になりました。最近読者の方々から、いくつかの興味深い感想をうけとりました。ほとんどは、一般的で、私の仕事にたいして感謝を表明してくださって、仕事を続けることを激励してくださっていますが、先月受け取った興味深いお手紙は、ちょっと違いました。皆様方にもお知らせしたいと思います。

今年3月上旬セライという雑誌に私の版画シリーズのことが載りました。ある方々は、その記事を読んで、お手紙をくださったり、お電話を下さいました(ある方々は収集家になってくださいました)。ある方々は続けるように激励して下さいました。私はこれらの手紙に返事を書き、仕事についてもう少し興味をもってくださるかもしれないと思って、ニューズレターを同封しました。富山県の亀井さんは、そのうちの一人で、明らかに単に目を通すだけではなく、くわしく読んでくださったようでした。実際には、初刊の6と7ページは、虫めがねでご覧になったと思います。彼のお手紙を引用させていただきます。── 『百人一緒』ご送付ありがとうございました。......今我々の忘れかけている『心』について考えさせられるものがありました。....初刊号のオリジナル版と複製版の比較写真が載っているページで....ちょっと気が付いたところがあったのですが。それは歌の部分です....文字の形は、みごとに複製されていますが、文字の筆の力を入れるところと抜くところのちがうところが、あるのではないかと思います。例えば大納言公任の『任』という文字、デービットさんのはにんべん『 』が『 』となっていますが、オリジナルはおさえてはねる『 』ではないでしょうか。──

このお手紙を読んで私はびっくりしました。そこで急いで公任の版画と、原画の拡大写真を取り出しました。虫めがねの必要もなく、彼が正しいとわかりました。私は筆の動きを完全に誤解していました。いつもは、歌を彫る時には、彫り始める前に、それぞれの文字の線の流れや、書順について理解するように努めます。漢字を彫るのに、その流れや、書順が理解出来ないと、正確に彫ることが出来ません。問題があるときには、三千代か、版画の包装を手伝ってくださっている芦田さんにたずねます。明らかにこの漢字を彫っていた時には、自分で分かっていると思って、アドバイスをしてもらわなかったようです。しまった!

三千代と私は、それをみつけたときに笑ってしまいました。 ニユーズレターに入れるのに、たくさん他の版画があったのに、私は特に『それ』を選んでしまいました。前に、私は原本のいろんな所にみつけた間違いについて書きましたが、今度は私の番になりました。

亀井さんが指摘下さったことを、いやだなどとは決して思っていません。彼のお手紙には、たくさんのご親切なコメントも含まれていました。彼がそんなにも注意深く見て下さって、お手紙下さったことをうれしく思います。版画を見て下さるほとんどの方は、とても称賛して下さいます。──私自身にとっては、とてもすばらしいけれど、私の技術を高めることにはなりません。上達する唯一の方法は、悪い点を研究することです。

もっと批判をおよせください。もちろん誉められるのは、とても嬉しいです。次に書いてくださるときには、版画のどの部分をよくすべきか教えて下さい。あなたのおっしゃることに同意しないかもしれませんが、間違いなく耳をかたむけます。私が次の歌を彫り始めた時、亀井さんのコメントについて考えていたということは、事実です。

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