デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

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長文さん

いろいろな人生を歩いている方々が、私の版画に興味をもって下さるということが少しづつわかってきました。 そこでこの小さな通信を出す毎に、その方々の一人を紹介したいと思います。

どなたをまず選ぶかということは明白で、それは、最初のお客様である、ここ羽村町の寿屋ベーカリーのオーナー長夫妻です。 私達は、二年ほど彼らのお店で買い物をしてきましたが、1989年 6月の読売新聞の地方版にのった私の新しい百人一首シリーズの記事を読むまでは、私が版画家であるとはご存じありませんでした。 ご夫妻は、私の版画を見たこともないのに定期購買者になってくださいました。

日本に来て以来、私は『日本の働きバチ』になったようで、三つの仕事、(版画製作、英語教師、リライター)を抱えて、一日12〜16時間働いていますが、このご夫妻に比べると、私はまったくのなまけもののように思えます。彼らのベーカリーには、24時間明りがついているかのようです。 早朝から夜遅くまでどんな時間に通りかかっても、彼らはいつでもをそこにいて、私の家族の為に食べ物を準備してくださっています。 長さんは、パンは神様の贈り物だけれど、仕事は悪魔の贈り物だと言われます。

長さんのご家族は、私の版画ばかりでなく、この地方の芸術家の絵や書を、ベーカリーにかざって、小さなギャラリーのようにしています。 彼らの自由な時間は、とても限られているので、芸術を楽しむには仕事場にかざっておくのが一番なのだと思います。

私の仕事を支えて下さることに対して、長夫妻に深く感謝致します。 そしてベーカリーのカウンターごしばかりでなく、個人的にも話し合うことが出来ればいいなと思っています。 もしも羽村を訪ねられることがありましたら、彼らのベーカリーに寄って、グラハム食パンを試してみて下さい。 私の二人の娘は、それを食べて育っています。

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