お年玉袋
富士山を印象的に表現したこの作品で、「小品集」はまったく違う方向に進みました。
この版画小品集は、きっかり半分ずつふたつのグループに分かれます。私自身がデザインした作品が5枚と、他から採用した絵を使ったものが5枚です。前回の作品がどちらに属するかは、御覧になってすぐお分かりだったことでしょう!
今回も私がスケッチした作品で、畳の目の模様を御覧になれば、すぐにそれとお分かりになることでしょう。年賀用に作ったこの版画集で、すでに使ったことのある題材ですから。
日本の方達には説明の必要がないと思いますが、収集家の半分を占める外国の方達には、この絵が何を示しているか分らないかも知れません。畳の上にあるのはお年玉袋で、新年の挨拶に出かける先方のお宅に子供さんがいらっしゃる場合に、小銭を入れてプレゼントとして渡す袋です。昔は、子供達がとても楽しみにしていた慣習ですが、最近ではありがた味が薄れてきているのではないでしょうか。
この作品を作っていた、今から10年以上も前のことを思い出します。娘達がこの版画を見て、「ダディ、畳の色が違うよ、緑になってるけど茶色だよ!」と言ったのです。当時の住まいでは、確かに茶色でした!家計のやり繰りが難しく、新しい畳表で新年を迎えるという日本の習慣に従うことができなかったのです。でも、少なくともこの版画の中では、習慣通りになっています!
それから、この作品の彫をしながら決めなくてはならないことがありました。袋の中に何を入れたらいいだろうかということです。版画なのですから、そんなことは無視しても良かったのかもしれません。絵に画かれた物の中身を見ることなどできないのですから。
でも、出来るかも... きれいに手を洗ったら、この版画を裏返して覗いてみてくださいね!
David