版画小品集 #2


もの合わせの札

2作目を御覧になって、「デービッドったら、今年は詠み札ばかり10枚送ってくるのかしら?」と思い始めていらっしゃるかもしれません。どうぞ御心配なく...そんなことはありませんから。最後になれば、かなり様々なテーマが入り交った集となるはずです。

でも、正直申し上げて、この作品を制作したのは1990年の暮れですから、日本の古い歌のことがいつも頭から離れなかったのは事実です。これは、当時復刻していた「百人一首」とは直接関係がなく、「三十六歌仙」で作られた札のひとつです。昔の日本人は、人や景色や歌など、有名な物を限定数選ぶのが好きだったようで、これもそのひとつになります。

こうした、札を用いた遊びの起源は、古く平安時代に遡り、貴族の間でとても人気がありました。彼らの日常生活を考えると、退屈で長い一日というのがほとんどだったことでしょう。定められた場所に住み、制約のある服装をし、交流範囲もきわめて限られていたに違いありません。このように、半ば強制的に暇を持て余す暮らしをしていたわけですから、書や文学や歌といった、彼らを取り巻く環境にある物を活用してできる遊びがあれば、自然と流行るようになったのです。そんな中、とても人気があったのは、対になったふたつの物を合わせる遊びでした。それは、同じような形をしたカードに(経済的に余裕のある人は貝殻を使ったりして)、関連性のある場所や動植物や物語などを暗示する絵が、対になって画かれていたのです。こういった、たくさんの組となったカードを床一面に伏せて広げ、対になったカードを見つけ出すのを競いました。現代の子供たちも、まるで同じようなゲームをして遊んでいます。

一体どこの誰が、このような遊びを思いついたのかは、まるでわかりませんが、歌を半分に分けて合わせ遊びをしようと考え出したのが、やがてカルタへと発展してゆきます。

さて、来月は、ちょっと趣きの異なる作品となります。広重と一緒に田舎へ旅をすることにしましょう!

David