版画玉手箱 #15


バンクーバーの日没

前回、外国人作家がまだ登場するだろうという旨のことを書きましたが、ご覧の作品がすでにそうなっています。ところで、作者は誰だと思いますか。

今年の制作スケジュールは、とてもきついのですが、7月の一週間だけ、なんとか作業台から開放されることできました。カナダのバンクーバーで家族と一緒に過ごしたのです。あいにく全員集合という訳にはいきませんでしたし(長女の日実は、仕事でカリブ海のクルーズに乗船しています)、これといって何かをしたわけでもありませんでしたが、一緒に散歩やクロスワードパズルをしたり、父がアパートの窓に取り付けた自慢の障子戸を褒め合ったりして、のんびりくつろいで過ごしました。

この間私は、常にデジタルカメラを携帯して、作品として使える面白い景色がないかと注意していたのです。帰国してすぐに、次の作品に取り掛からなくてはならないことが分ったいたからです。ところが、蓋を空けてみれば適当な写真がまるでなく、手ぶらで戻ってきたも同然でした。

でも、たまっていたEメールに目を通していると、その中に妹からのものがあり、バンクーバーにある彼女の自宅近くのアパートからの眺めを公開しているウェブカメラについて知らせていました。早速、そのカメラから数分刻みで送信されている生の画像を自分のパソコンで見ると、夕闇直前の素晴らしい景色が迫っていることに気付いたのです。

私は、後からじっくり観察して版下を作ることができるように、遠い山の彼方に夕陽が沈んだ直後の画像を捉えました。そして翌日には、この景色を木版画にする作業に取り掛かっていたのです。

インターネットという現代のマジックの御陰で、今年の7月20日に、遥か6,000キロ離れた東京から見た、バンクーバーにあるイングリッシュベイの日没の生映像です!

David

平成17年8月22日