版画玉手箱 #14


かささぎと虫

この「版画玉手箱」シリーズ、次の作品についてのみなさんの予想は、どの程度当たっていらっしゃいますか。次々と無作為に選ばれているかのようで、困惑していらっしゃるでしょうか。それとも、色々な様式から選りすぐられた作品集として楽しんでくださっているでしょうか。

今回は、このシリーズで初めての(最後ではありません)外国人作家、ジュール・シャデル(Jules Chadel)というフランス人が、1910年頃に制作した作品です。日本美術がヨーロッパに多大な影響を与えた19世紀から20世紀へ移行する時期に、盛んに活動をしていた「日本美術の友の会(Les Amis de l'Art Japonais)」というフランスの画家グループがあり、彼はこの会員でした。

この影響については記録がありますし、一般にもよく知られていて、絵の中にそれが見てとれるというのが、ほとんどの場合です。ところが、シャデルのように、技法面で日本の影響を受けた作家も何人かいたのです。当時西洋では、ほとんどが油性インクを使って木版画を作っていたのに対し、彼は日本の版画技法に倣って、水彩を用いました。どのようにして彼がこの技法を学んだのか、それを記す資料はありません。でもおそらく、この頃イギリスに移住していた版画職人の漆原由次郎から学んだ人達と何らかの交流があった、あるいは、当時たくさんの日本の版画がヨーロッパに渡っていたので、それらの作品を研究して独自に工夫をしたのかもしれません。

私は、西洋の作家がこのように水彩を用いて木版画制作を試みていたにもかかわらず、現地でその技法が定着しなかったという事実を、とても残念に思います。イギリスでは、他の近隣諸国よりも水彩木版が盛んでしたが、それでも結局は、油彩を用いる手法に落ち着いてしまいました。

この主な要因として私が考えるに、日本の木版画技法は、たくさんの経験を積まないと均一な作品が作れない、従って、まるで同じ版画をたくさん作ることができなかったからだと思います。油性インクとプレス機を使う方がずっと単純ですから。

でも良い面を見るならば、たいした競争相手もなしに私が版画制作を続けていられるのは、正にこの御陰ということになるでしょう!

David

平成17年8月1日