「自然の中に心を遊ばせて」 : 第四章 : 川の秋
「川辺にある、上から木の枝が覆い被さる場所で、チラチラ燃える炎を見つめながら、今の僕は思考から放たれて浮遊するかのようだ。小さな明かりの輪はほんの数メートル。暗闇の広がり始めるその端では、川が音を立てて流れているのだが、すぐ目の前なのに何も見えない。温かなココアを両手で包むように持ち、踊る炎を見つめる。「瞬時も止まることなく動き続けているのだが、その姿に変化はない」様子は、川の流れとまるで同じである。現在の僕は、ずっと離れた場所から見たらどんな風に映るだろうか。チラチラする炎の作り出すオアシスのような空間。小さなテントの前に座り、じっと動かない姿……夜の闇がそれら全てをすっぽり包む……。こんな小さな木屑の固まりとマッチ一本、たったこれだけの物が魔法のように出現させる異空間。」