デービッド・ブルが発行している季刊誌「百人一緒」に掲載された記事です。

ここに、バックナンバーがすべて集めてありますので、号数あるいはテーマ別分類から、選んでお読みください。

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「自然の中に心を遊ばせて」

「摺物アルバム」を制作していた頃、それぞれのセットに含まれる絵は、色々な題材が混ざるようにしていました。かなり幅広い内容になっていて、私としては、収集家の方たちの好みでない作品が含まれていても、セット全体を1つのまとまりとして見ていただきたい、と考えていました。

今回の企画も、同じような観点から作っています。私自身、まだオリジナル作品を創り出す作家としての個性を、はっきり掴みきれていないため、作品を手にするみなさんは、予想外の作品が送られてきたと感じることがあるかも知れません。まだ、「デービッドの作風」なるものが確立できていないのです。そういった意味で、今回の企画は私の開拓分野と言えるため、収集してくださる方々は一体どのような作品が送られてくるのか皆目見当がつかないことでしょう。

でも、作品のテーマがまったく無秩序というわけではなく、かなり明確な決まりがあります。私は、この企画を始める前に、基本的な構想を決めていました。それは、異なる3つの場所(川辺、海、森)で、季節毎(4季)の作品を作るということです。そういった枠組みをしっかりさせた上で、更にいくつかの決まりを作りました。どの場所でも夜の場面を1つ含むこと、天候に変化をつけること、そして全12作になることです。

時々、どこまで写実的に画いているのかと聞かれます。企画を始める前は、自分のデッサン能力の不足を懸念して、写真に頼りすぎるあまり、実際の場面を版画に移し取ったような作品になるのではと心配していましたが、幸いそうはなっていません。実在する地形通りという点では、写実的な作品となっています。実際に川辺の岸壁を背景とする場所でキャンプをしたり、朝目覚めて木々を覆う霧を目の当たりにしたりしています。でも、それと同時に、ここに表現した風景は写実的ではないのです。もしもみなさんが、私と一緒にこれらの場所を歩いて、正にその場所を通ったとしても、かすかなりともお気付きになることはないでしょう。

私はこのように、どちらとも決めかねる曖昧さを残したことに、満足しています。作品の中にある種の矛盾が存在するということが、私の作品を特徴付ける点になるかもしれません。「統一感がなく」しかも「混乱を招く」作品でしょうか。それとも、この曖昧さは受け入れてもらえる要素となるのでしょうか。現時点では、私自身にもまだはっきりとせず、ひたすら制作を続けるのみです。

この企画を成功と判断するか、あるいは大失敗とみなすか — おそらくその中間あたりに落ち着くのではと思いますが — それは、ご覧になる一人一人の判断に任せるところとなるでしょう。私個人の観点からすると、ほぼ好調と考えています。どの作品にもまだ向上できる(/すべき)部分は見えるのですが、あいにくひとつの作品を作り終えると、すぐに次の作品に気持ちを切り替えなくてはならないのが実情で……。

この文章を書いている現在は、7作目の作品を収集家の方々へお送りしているところです。ということは、あと5作残っていることになり、この企画を終えるまでにあと1年と少しかかるため、完成は2010年の初め頃になるでしょう。

次の企画は? まだまだ、それどころではありません!

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