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鵜飼い

「日本の美術」シリーズ、今回はちょっと雰囲気の違う作品です。「釣り」などこのシリーズにそぐわないと思われる方がいらっしゃるかも知れませんが、漁をする立場にある方なら異論のないことでしょう。

絵の作者は川合玉堂で、著名な作家による「日本の名所」と題した版画集として、大正2年に出版されました。大正2年は1913年、偶然にも、今から丁度百年前です!

場所は鵜飼で有名な岐阜の長良川、少なくとも1300年は続いている漁業の方法です。鳥が飲み込もうとする魚の中で、小さい物は飲み込ませ、残った獲物を漁師が収穫します。

現代の私たちから見れば、観光を目的としてのみ行われる鵜飼ですが、かつては理に適った漁法だったはずです。では、いつ頃から観光目的の行事になったのでしょう。数人に聞いてみたところ、「昭和時代」あるいは「戦後」との答えがほとんどでした。でも、この作品の上の方を見て下さい。これは別の釣り船ではなく、行事を見物する人々を乗せている船です。ですから、大正2年(あるいはそれ以前)には、鵜飼が「日常の暮らし」から「娯楽」に変わっていたことになります。

そして現在私は、木版画を逆方向に動かそうとしているのです!

David

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