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かんざし

前回の作品について私は、「この作品は、いつも制作している浮世絵とはかなり違う技術を要するものでしたから、彫にも摺にもそれ故の面白味がありました。」と書きましたが、今回は逆の理由から、このように表現したいと思います。「この作品は典型的な浮世絵で、日本の伝統木版画の神髄を含有しているため、彫にも摺にも尽きない面白味がありました。」

ご覧になっているのは鈴木春信の作品で、絵の一部を拡大したものです。元になったのは、若い女性たちの日常生活を描写した絵本シリーズで、手紙を書く、ペットと遊ぶ、花を生ける、そして、この絵のように髪を結うなどの様子を画いています。

この絵の中にある簪(かんざし)は、その起源が古代にまで溯ります。細い棒の形をした簪は、魔を払う神秘的な力があると考えられ、髪に挿すようになりました。(細い棒に神秘的な力が宿るというのは、こじつけの感が否めませんが、ハリーポッターならそれほど変だとは思わないでしょう!)こういった初期の段階から、形を整えたり髪型を調整したりという実用性を兼ねたものとして発展していきます。

また、簪の中には護身としての用途を備えた装飾品もあり、実際、とても危険に見えるものもあります!

現代ではもちろん、こういった用途はなくなりましたが、結婚式で伝統的な髪型をする時にだけは、たいていの女性が使用します。それにしても、これほど顕著に日本的な装飾品はちょっと思いつきません!

David

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