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鳥獣戯画より

私の作品の収集家は世界中に分散しているので、「海の向こう」と日本国内、双方の人達に興味を持ってもらえる絵を選ぶようにしています。版画に添えるこの文章にしても、どの程度説明をしたらよいのかを考えなくてはなりません。そうすると今回は、かなりの難題になります。これは、海外の人達がほとんど見た事がないのに、国内の人なら誰でも良く知っている絵だからです。

「鳥獣人物戯画」は、日本文化の名残として最も良く知られている一連の絵巻物のひとつで、12世紀頃から画かれたものです。この絵巻物については、専門家の間で長年にわたり議論が交わされています。現代における漫画の、最も初期段階にある先駆的な存在であるとする説がある一方、この絵巻物は近代になるまで一般庶民には公開されなかったのだから、かなり限られた影響しか及ばなかったはずという説もあります。

こういった説がどの程度真実を語るのかはさておき、とても面白い絵巻物であるという点に関しては議論の余地がありません。この絵を画いた中心人物(誰であるかは、これまた議論のあるところ)は、間違いなく巧みな絵筆を振るう人物だったはずです。どの動物も、まるで生きているかのように、長い絵巻物の中を躍動的に動き回っています。

私は、この中のほんの一場面を選んで作品にしてみました。有名な「相撲」の場面です。(この作品が画かれたのは、相撲が競技として確立されるずっと以前ですよね。ですから私は、「勝負」ではなく「戦い」と解釈されるべきだと思うのです!)

この作品は、いつも制作している浮世絵とはかなり違う技術を要するものでしたから、彫にも摺にもそれ故の面白味がありました。みなさんに、仕上がりを楽しんで頂けるといいのですが……。

David

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