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鎌倉大仏

この「日本の美術」シリーズを企画検討しているとき、ある案が浮かびました。題材を大きさ順に紹介していくという案です。何か小さなものから始めて、最後はちょうどこの作品のように、最大級の対象物を題材にした作品で幕を閉じるという案だったのですが……。

私はこの大仏を、初めて日本に来た1981年に見ました。好天に恵まれた冬のある日、私たちは鎌倉巡りをしようと電車に乗りました。駅を降りると、私の常で裏道を選んで歩き、この大仏のあるお寺へと向かったのです。

ここにある場面は、私たちがその姿を最初に見た様子とかなり似ています。遠くの方にある仏像の頭の部分だけが、塀の上に突き出て見えたのです。「あっ、あそこ!」と、このように見えたことが私たちの気持をより一層昂揚させたのです。ずっと昔、はるばる遠方からこの大仏を拝観するためにこの地を訪れた人達が、遂に近くまで辿り着いたときの気持が、私たちにも少しは感じられるかもしれません。

造像されてから何百年もの年月を経ている大仏は、様々な歴史を見てきたことでしょう。かつては大仏殿の中に安置されていたのですが、津波によって周りの建物は流されてしまいました。昨年、東北を襲った津波の被害映像を見てきた私たちは、押し寄せる波が仏像の土台の周囲に迫り、建物の壁も屋根も根こそぎ破壊する様子を容易に想像することができます。粉々になった残骸は海に流され、大仏だけが取り残されたのです。

「ちっぽけな」人間が、これほど複雑で美しさを備えた大仏像を建立したこと、しかも、当時使えた道具はごく原始的なものであったことを考えると、私は深く畏敬の念を感じます。完成したときの感動、私たちには想像することしかできません!

David

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