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狂言 太郎月

版画玉手箱の新シリーズ、幕開けを飾るのは、私が何年も前にある版画集の中で初めて見たときから心引かれている作品です。今回のテーマは「日本の美術」ですから、この作品は、舞踊や着物、あるいは傘作りといういろいろな面から何度も再登場しうる内容を持っています! でもこの描写が最も象徴するのはやはり狂言です。笑いの世界へと観客を誘う狂言は、対照的な世界を持つ能と深く結びついています。

狂言はいくつかの短い場面からなり、多くは能の幕間に演じられます。深刻な内容とはほど遠く、踊りと台詞の両方が、かなり強調された形式で物語が進行します。また能とは違い、観客に分かり易いのが特徴です。

この作品は、太郎月と題された狂歌本の中にあると記載されています。作者は北斎ですが、彼が絵師として活躍し始めた初期の頃、まだ宗理と名乗っていた1790年代のものです。画かれているのは、狂言で頻繁に登場する主人と太郎冠者でしょう。この場面が何を示しめしているかは、歴史の中に消えてしまって……。

という訳でこのシリーズは、江戸中期となる250年程前の作品でスタートします。今回の旅はこの時代から出発して、過去を行ったり来たりします。日本文化の歴史は長いので、様々な時代に立ち止まることでしょう。じっくり構えてお楽しみください!

David

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